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この記事はCoRE1こんてにゅ~足回り紹介②【サスペンションと無限回転】
はじめに
はじめまして。2025年CoRE1大会初出場「こんてにゅ~」の足回り設計担当ONE杉です。はじめに、この記事は長ったらしくなることが予想されるため、お急ぎの方は太字だけ読んでいただければOKです。 そのうちCADも公開する予定なので詳細な設計はそちらをご参照ください。
見どころ
激安機構部品の発注元リンク掲載
自作オムニ設計について
CoRE1出場機体
本機体のコンセプト
CoREルールについて
CoREには様々なルールがありますが、本記事をご覧になるにあたって押さえておきたいルールは、とりあえずこれだけです
フリスビーのようなスポンジディスクを発射するロボット「アタッカー」が存在する
試合はチーム戦でアタッカーは1チームに複数台いる
HP制で機体のダメージパネルにディスクを当てるとHPが減少
攻撃を避けながら相手を倒しまくれば勝てる
↓こちらを見るとわかりやすいかもです。
チームで決めた機体のコンセプト
このルールを踏まえて、機体を作るにあたって私たちが打ち出した案がずばり 高速回転しながらディスクを打てば防御&攻撃型の最強機体になるんじゃね? でした。
なぜそう考えた?
RoboMasterから着想
RoboMasterというロボコンをご存じでしょうか。中国深センでドローンで有名な大企業DJIが主催するロボコンです。ABUとは比べ物にならないほど多くの学校が参加するロボコンで、中国国内で最も大きく有名なロボコンと言っても差し支えないと思います。 簡単にRoboMasterを紹介すると、硬いゴム弾を打ち合って相手や基地を攻撃して勝敗を争うリアルFPSゲームです。CoREのもとになっている大会だと思うので、結構ルールは似ています。一旦は発射する物体だけ違うものと思ってください。 このRoboMasterで攻撃から守る手段として用いられているのが高速無限回転です。RoboMasterではダメージ判定がある装甲板を自動認識するのは当たり前になっており、静止しているとすぐにやられてしまいます。それを回避するためにダメージ判定がある足回りだけ無限回転するという手法が取られています。
ダメージパネルの特性
CoRE2025で使用されるダメージパネルは、物理的にパネルが押し込まれることによってダメージ判定を行います。てことはめっちゃ高速回転すれば遠心力でダメージ食らいにくくなるんじゃ?という予想から足回り無限回転する機体を作ろうとなったわけです
チーム戦であるという点
仮に被ダメージが大幅に減らせる機体に仕上がった場合、相手陣地にガンガン攻め入ることができるため、盾役として活躍できるだろうと考えました。無限回転する機体にするにはディスクの装填数が少なく連射性能が低いという欠点が生じるが、その点は他のチームのロボットに頼らせてもらうことにしました。
画像 ダメージパネル
機体部品の発注について
これから時代が変わるかもしれないことをお話しします(大げさ)。今回製作したこの機体、99%外注です。それで機構部品の合計金額は8.5万円(送料,モータ,バッテリ,回路基板系除く)でした。700×700㎜の機体でほぼ手加工無しと考えるとめちゃめちゃ安く抑えられたんじゃないかなと思っています。 発注は中国のサイトTaobaoを利用。アリエクとの違いや詳しい発注方法は僕も把握しておらずお教えできませんが、注文、業者とのやり取り、発送の方法を習得すればかなり安くロボコンができると思います
金額一覧 角パイプ 3.5万円
CNC 0.6万円
ガラス繊維板、カーボン板CNC 0.9万円
その他(ネジ,ベアリング,オムニゴムタイヤ等) 3.5万円
画像 画像 ガラス繊維板 画像 ネジもすべてTaobao品
機体概要紹介~足回り~
足回りコンセプト!
安くて滑りにくく高速回転➡自作オムニ、Yaw軸無限回転機構
坂、多少の段差を走破可能➡リンクサスペンション
構成要素
自作オムニ
サスペンションリンク
Yaw軸無限回転機構
機体詳細①自作オムニ
なんでオムニを自作?
作ってみたかったから 学ロボ現役時代からオムニ等は既製品に頼っていたが、自作している方のツイートを見ていると作ってみたいなーと思っていた
軽量化
市販品(Taobao含む)は過剰剛性なものが多く重いため、軽量化したかった
グリップ性
よく見るオムニはタイヤがカスという噂を聞いた&これ故RoboMasterに参加している中国の学校は既製品よりも自作が主流らしい
画像
②各部品紹介
ガラス繊維板
初めて聞く方も多いと思いますが、TaobaoではGFRPの板材?を切削してくれるサービスがあります。具体的な材料特性は不明ですが、基板の素材に近いですね。アルミよりは若干強度は劣るが安いのが特徴。
オムニウレタン+小ベアリング+軸
これはTaobaoにセットで売っています。リンクはこちら!(Taobaoアカウントを作成しないと詳細まで見れないかもです)。中国のRoboMasterチームは皆これを使って自作しているそうです。ゴムとウレタンがありますが、私は安くて耐久性が高いらしいウレタンにしました。在庫状況が安定しませんが、待てばまた買えるようになると思います。 オムニのCADもオープンソースがあります。これをほぼほぼパクって作りました。そのうち弊機体のCADはアップする予定ですが、オムニはこのソースを参考にするのが良いでしょう。ただ注意点があり、ウレタンを買った時についてくる軸はCADだと25.5㎜だが実測だと24.8㎜程でした…何とか組み立てられたのでよかったですが。
画像 ウレタンに小さいベアリングを押し込み軸を通す 画像 ☆型M3508軸固定用板金 TaobaoにはM3508に固定する用の板金が売っています。まあ便利なこと。主にRoboMasterで需要があるので売り切れてもそのうち在庫が復活します。ただ1ペア1000円と意外とお高めなのでCNC自作できる人はそちらの方がよいかも。 ☆の頂点の部分の穴はM5タップが切ってあります。M3508のDカットをネジ2本で挟み、オムニをM5ネジで締結します。M3508軸のM3雌ネジとの固定穴も開いていますが、あくまで位置決め用に使用しましょう。左右のねじが緩んだ時せん断します。
画像
③ガラス繊維板の設計と構造
画像 設計した自作オムニ 中央の板はこのように設計。タイヤ軸を溝にはめ込み、他2枚(後述)で挟んで固定する形式。
画像 スケッチはちょっと大変 ガラス繊維板 3種類
オムニゴム、小ベアリング、軸(Taobao購入)
ネジナット(M3L13㎜)
上記を2セット(以下オムニユニット)+挟むスペーサ(3Dプリント)+M3508固定用部品で構成されてます。
画像 オムニ直径は130㎜で設計
④組み立て
画像 M5ねじ+オムニユニット+3Dプリントスペーサ+オムニユニット スペーサは壁厚みを増やして印刷したABSプリント品で十分でした。
画像 上記+M3508固定用板金(☆型のやつ)でモータと固定 中国RoboMasterチームはみんな入れてるというので、モータ軸にスラストベアリングが入っていますが、あんまり意味をなしていない気がするので、無くてもいいです。
⑤動作
機体が軽め&サスペンション付きなこともあって、ほぼスリップすることなく動作ができました。初めての動作チェックでは、想像以上の機動力と速度でメンバー皆爆笑してました。。オムニってだいぶ滑って機動性に欠けるイメージだったんですが、ここまでの急発進急停止高速回転ができるポテンシャルがあるとは…。 本番では加減速込み7m/sを出してしまうとフィールドを破壊してしまう可能性があったため1/7のリミッタをかけました。
コメント
外周の固定はM3×13㎜+ナイロンナットで 板厚みが3㎜×3枚でナイロンナット締結で4㎜とすると13㎜が適切な長さです。15だと見栄えがだいぶ悪化しますし、場合によっては他部品と干渉します。日本だと入手性が悪いですが、Taobao等を使えば1本1円以下であらゆる寸法や形状のネジを買うことができます。 あと必ずナイロンナット等ゆるみ止めが付いたものを使いましょう。ナットを使用しない部分にはゆるみ止め剤を塗りましょう。タイヤ回りは絶☆対☆必☆ず☆緩みます。普通に締結するだけだと後で泣くことになります。私はロボマスで何度も泣きました。
板材発注と日本発送 私は板材をこのお店で発注しましたが、中国のChatアプリWeChatで業者とのやり取りが必要です。私は友人にこの辺をお願いしてしまったため具体的な発注方法&日本への発送方法はまだお教えできませんm(__)m。自分でもできるようになったらまた記事にするかもです。
機体詳細②サスペンションリンク
学ロボの話
すこし話が逸れますが、学ロボでは近年、インホイールや独ステ等、各学校の個性ある足回りを見ることができますがサスペンション付きの足回りはあまり見ないですよね。その理由として私が考えるに以下の点が挙げられます。
段差が少ない
まずサスペンションのメリットとして、全部のタイヤが浮かずに接地するため、空回りの発生を抑え、機動性が良くなる。段差等を容易に超えられる。という点が挙げられます。 一方で学ロボは足回りで走破する必要がある段差や坂が少ないです。3,4輪が普通に接地していれば問題なく走行できます。
部品点数、可動部が増える
特にこれに尽きると思います。部品点数の増加は設計製作コスト増、重量増、信頼性低下等を招きます。必要性の少ない機構を付けることは、製作期間が短く重量制限の厳しいロボコン機体に搭載するにはデメリットが多いです。
CoREとロボマスの話
一方でCoREのフィールドには一部段差や坂が存在し、ある程度の走破性が求められます。また、床に散らばったディスクに乗り上げても問題なく走行ができる必要もあります。そのため機体にサスペンション機能を付けることはほぼ必須です。 ロボマスはさらに凹凸の激しいフィールドでの走行を求められます。走行できないと試合中すぐに倒されてしまう以前に、そのような段差を問題なく走行できなければ、試合前のロボットチェックの時点で失格となってしまうのです。
本題
以上を踏まえて、今回のCoRE機体はロボマス機体をほぼほぼ真似て作りました。私が新規設計した部分ではない要素が多く存在しますが、特徴とメリットをお話ししていこうと思います。
①設計
はじめに、機体すべてに言えることですが、これらの設計は「設計として正しい」という確証はありません。「ロボコンで壊れず動けば良い」という思想で設計していますのでご了承ください。 機構はダブルウィッシュボーン式となっており、平行リンクで床面とオムニが常に垂直に接地するようになっています。このリンク先のアニメーションがとても分かりやすいかと思います。 以下のように色付けをしてみました。黒の部分は機体の角パイプで固定される部分で、黄色の板金がモータとオムニが付く部分です。青色のダンパーで衝撃を吸収することでサスペンションの役目を果たします。 線対称になっており、左右同じ板金を長いねじとスペーサ(アルミ中空又はABSでも可)で挟んで固定しています。
画像 以下の図はリンクの軸の分解図です。使用している軸は後述しますが、軸付きボルトと薄いスペーサ(ABS製)でベアリングの内輪を押さえています。外輪は板金とフランジを接着することで固定。
画像 リンク軸の分解図 M3508の固定アルミ板金は以下のようになっています。4点でモータと固定し、側面のφ6の穴に軸を通しています。このモータ固定ネジはとっても緩みやすいので、ゆるみ止め剤を必ず塗りましょう。
画像 ポケット加工部にギアヘッドがはまる
②購入部品
今回購入した特殊な機構部品だけピックアップして記載します。
ストリッパボルト
軸付きボルトのことをこの名前で呼ぶことがあります。特徴としては ・軸部分にベアリングが入る ・ボルトのヘッドでベアリング内輪を押えられる ・部品点数が減らせる という点があり、知ってからはよく使っています。ミスミにも売っていますが、Taobaoがやはり安く種類が豊富です。軸部分の精度も結構良くて、ボルトヘッド付近はg6公差くらいでてます。但しネジ部分に近づくにしたがって細くなっているので、軸のどの部分でもちゃんと公差嵌めしたい場合は使えませんが、よっぽど精度が欲しい部分以外は問題ないかと思います。
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ショックアブソーバー
RoboMasterでよく使われるとのことでCoREでも採用しました。2本で3700円くらいです。ばねの強さも変えることができます。 接手の穴径が3㎜なので、設計ではM3長ネジを通して使用しています。ただこの設計だとモーメント負荷がかかりすぎて、この部分のねじが曲がる恐れがあります。実際、試合後若干曲がってたため、改良の余地ありです。
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直方体ナット
オムニユニットと足回りフレームの角パイプとの固定は4つネジ切りされた直方体のナットを使用しています。1個40円くらいです。板金のコの字の部分に2020の角パイプをはめ、ネジ8本で固定しています。
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③動作
↑のオムニ無しの状態で850gでした。
Yaw軸無限回転機構
本機体は足回りとダメージパネルのみ無限回転し、発射機構は回転しないようにするために、足回り中央部にYaw軸回転用のモータが付いている。
画像 足回りのみのCAD
①設計
主な構成要素は以下の通りです。 ・モータ(GM6020) ・クロスローラベアリング ・ベアリング内外輪固定板金 ・スリップリング ・両端雌ネジスペーサ 説明するより見たほうが早いので、以下の動画又は後日公開する全体CADをご覧ください。
青色はプリンター部品、緑はスリップリングです。 このように板金を組み合わせることでクロスローラベアリングの内輪外輪を挟んでいます。またYaw軸上の機構の荷重がモータにかからないように、外輪のスペーサへ荷重を分散させるようにしています。
②各部品の紹介
スリップリング 回転しても配線がねじれないようにするためのものです。独ステで時々使われているのを見ますね。
クロスローラベアリング このベアリング一つでラジアルスラストモーメント荷重をある程度許容できる優れものです。ミスミで買うと普通に1万超えるような高額なものが多いので、Taobaoで3000円で購入しました。
画像 ベアリングと外輪固定部品 画像 組み立て中の写真
③動作
足回り全体 組み立て途中の様子
画像 中央2本はアルミフレーム 画像 画像
おわり
CoRE2025「こんてにゅ~」の機体の足回りの紹介は以上となります。結果として試合では、当初の想定以上の機動力と高速無限回転をお見せすることができたので、設計担当として満足しております。 各設計や購入品で参考になるものがあれば幸いです。最後までご覧いただきありがとうございました。