スマホゲームのKPI (Key Performance Indicator: 重要業績評価指標) の基本 - nekoharuyuki/PuzzleRPG-cocos2d GitHub Wiki

スマホゲームの基本KPI -1. DAU, PUU, ARPU, ARPPU, 課金率-

スマホゲームのKPI (Key Performance Indicator: 重要業績評価指標) の基本に関して解説していきます。

スマホゲームのKGI -売上-

KPIの話に入る前に、似たようで別の指標である KGI (Key Goal Indicator: 重要目標達成指標) について軽く触れたいと思います。 KGI とはその名の通り「目標 = Goal」の達成を図る指標で、一番基本的なものとしては「売上」や「利益」があげられます。非営利として開発・運営するならまだしも、商品としてゲームを制作・運営するにあたっては「売上」は無視できない指標なため、売上がプロダクトの最終的な目標として設定されることが大半です。 そして、KPI は KGI を達成するためにその構成要素を分解し、最終目標がどれくらい達成できているか・できそうかを評価するために用いられます。

基本 KPI 1. -DAU, ARPU-

では、その「売上」はどのような KPI に分解可能なのでしょうか。 売上を分解する方法はいくつかありますが、最も基本的なものは売上を 顧客数 x 顧客単価 に分解する方法です。スマホゲームでは日次の KPI を追うことが多いため、顧客数は 1日の利用者数、顧客単価は 1日の利用者数の1人あたり売上を指します。前者を業界用語で DAU (ディーエーユー、ダウ: Daily Active Users)、後者を ARPU (エーアールピーユー、アープ: Average Revenue Per User) と呼びます。

日次売上 = DAU (1日の利用者数) x ARPU (1人あたり売上)

ざっくり述べると、スマホゲームの運営にあたっては、この 2 つの KPI を最大化していくことで 売上の向上を図っていきます。

基本 KPI 2. -PUU, ARPPU-

売上を分解するもう 1つの方法として、売上を課金者数 x 課金者1人あたりの顧客単価に分解するやり方があります。日次ではそれぞれ PUU (ピーユーユー: Paid User)、ARPPU (エーアールピーピーユー: Average Revenue Per Paid User) と呼びます。

日次売上 = PUU (課金者数) x ARPPU (課金者1人あたりの売上)

つまり、お金を払ってくれたユーザーの数と、その方々の平均課金額をかけた合わせることで、売上を出すことが可能というわけです。ダウンロード無料のゲームでは遊んでくれているユーザーを課金者/非課金者と分けられるため、こういった捉え方もあるわけなんです。

基本 KPI 3. -課金率-

これまで、DAU, ARPU, PUU, ARPPU と 4つの KPI を見てきました。最後に、これらと関係の深い「課金率」という KPI についてみていきたいと思います。

課金率とは、日次で考えるならば、1日の利用者数のうち何人の方に課金してもらえたかを表す指標です。

課金率 = PUU ÷ DAU

あくまで課金してくれた人数の割合を見るだけなので、課金者の課金額については何も語ってはいません。ですが、例えば 2つの日の課金状況について比較する際、実数値である PUU はそもそもの分母である DAU の大小の影響を受けてしまうため、その影響を除いた課金率で比較することも多く、ゲーム運営の現場ではよく使われる指標です。


スマホゲームの基本KPI -2. インストール数, NUU-

ゲームを遊んでくれる「人」に注目した KPI、インストール数と NUU について解説していきます。

基本 KPI 1. -インストール数-

大半のスマホゲームは App Store や Google Play Store などのプラットフォームにて公開されており、そこで日々人々によってインストールされています。 このインストールされた回数を示す指標が、その名の通りインストール数です。誰がインストールしたかを問わず、1回のインストールを1インストールとしてカウントしています。また、インストール数はあくまでインストールされた回数を純粋にカウントするため、同じ人が2回、3回…と複数回インストールした場合は、2回、3回と複数回カウントすることになります。 それゆえに、インスト―ル数は必ずしも新しく入ってきた人の人数を表すわけではなく、通常はその人数よりも大きな値となります。

基本 KPI 2. -NUU-

インストール数とは別に、やはりその日に入ってきてくれたユーザーが純粋に何人いたかを把握したいですし、する必要があります。それを示す指標が NUU (エヌユーユー: New Unique Users) です。

NUU はインストール数をもとにした値ですが、同じ人に2回、3回とインストールされた場合でも、新規流入顧客数を示す NUU は 1とカウントします。スマホゲームではチュートリアル後のガチャでいいものを狙ういわゆるリセマラが良く行わるため、新規流入顧客を把握するうえではインストール数よりもこの NUU がよく用いられます。*1

1日の利用者数を表す DAU を増やすためには、いかにしてより多くの NUU を獲得するかがキモとなります。NUU を増やすために、CMやネット広告などの広告を出す、ゲームの記事を出稿してもらう、口コミによる拡大を狙うといったマーケティング施策が主に用いられています。NUU はそのマーケティング施策がどれだけうまくいったかを表す指標としても用いられ、次の施策に生かされているのです。

また、蛇足ですが、NUUとインストール数を組み合わせることでリセマラ率という数字を出すこともできます。式としては NUU ÷ インストール数と単純なもので、インストール全体のうち何%がリセマラによるものなのかを示します。開いているガチャのキャラが強力なものだったりする場合、このリセマラ率は通常跳ね上がります。


スマホゲームの基本KPI -3. RR-

DAU や NUU とも関連が深く、ゲームの運営上も非常に重要な KPI 、継続率を表す RR について見ていきます。

基本 KPI 1. -RR-

RR (アールアール: Return Rate) とは、継続プレイが重要な指標となるスマホゲームに特有の KPI で、ある期間にアクセスしたユーザーが〇日後に再びアクセスした率を表します。

例えば、2016年10月23日にアクセスしたユーザーが 1,000人いたとして、その人たちのうち翌日の10月24日にアクセスしたユーザーが 500人だった場合、RR は 50% (500 ÷ 1,000 = 50%) となります。

一般的な用いられ方としては、ある日 (例えば 2016年10月23日) にインストールした人 (= NUU) を対象にして、その人たちのうち 1日後に再アクセスした率を 1-d RR (ワンデイアールアール: 1 day RR)、2日後に再アクセスした率を 2-d RR、3日後は 3-d RR……という感じで追っていき、どれくらいの人がゲームを継続プレイしてくれているのかであったり、どのタイミングでユーザーが離脱しやすいのかなどを見ていきます。

RR の注意点

上記の通り、RR はゲームのプレイ継続率を示すものとしてよく用いられている指標ですが、必ずしも各ユーザーの継続プレイを表している訳ではありません。

たとえば、ある日の NUU が 1,000 だったとして、その人たちのうち翌日にアクセスした人が 500 人であれば 1-d RR 50%、翌々日にアクセスした人が 300 人であれば 2-d RR 30% となります。この時、2-d RR にカウントされるユーザーはあくまで「インストール翌々日にアクセスした人」であって、インストールの翌日から継続して遊んでいる人も、翌日はアクセスしなかったが 1日あけて翌々日にアクセスした人も等しく 1としてカウントされてます。

なので、RR はユーザーの継続率を示す指標であるといえども、必ずしも個人の継続プレイをダイレクトに表しているものではないことを頭に入れたうえで見ていく必要があるのです。

NUU, RR, DAU

最後に、前回まででお話しした NUU と DAU、それらと RR の関係を見ていきます。

ゲームの運営にあたって、利用者数を表す DAU を増やしていくことが重要であることは前々回で述べた通りですが、この DAU を増やすにあたっては、いかに多くの NUU を獲得できるか、ならびにいかに RR を高めて獲得したユーザーに続けてもらえるかが大事になります。

この双方の KPI が十分でないと、そもそもユーザーを獲得できない、もしくは獲得した先からどんどん離脱を招いているという形になり、DAU はなかなか積みあがっていきません。

RR を高めるためには、そもそもユーザーがどのポイントで、どういった理由で離脱しているのかを特定し、それを1つ1つ良くしていくという地道な完全が求められます。ユーザーの離脱原因を特定するのは非常に難しいですが、RR は健全な長期運営に必須の要素ですし、これを向上させる UX の追及は非常に深いトピックですので、ぜひとも開発・運営に携わっている方はより良い UX の追及と RR の向上を目指していってください。


スマホゲームの基本KPI -4. RR変化率-

RR をより詳細に観察した指標である RR 変化率というものを見ていきます。

基本 KPI 1. -RR変化率-

まずは RR 自体のおさらいです。RR とはある期間にアクセスしたユーザーが〇日後に再びアクセスした率を表すものでした。

必ずしも同一のユーザーの継続プレイを表しているものではないですが、 一般にマクロで観察したときのユーザーのプレイ継続率を表す指標として用いられているものでしたね。

では、今回見ていく RR 変化率とはどのような指標なのでしょうか。RR 変化率とは、RR の 1日ごとの変化を追っていったもので、〇-day RR とその翌日の RR の間にどれくらいの差があるのかを表しています。

例えば、1-day RR が 50%、2-day RR が 40% だった場合、1-day と 2-day の RR 変化率は 80% となります (40% ÷ 50% = 80%)。

RR が同一ユーザーの継続率を表しているわけではないため、この 80%という値も、1-day でログインしたユーザーの 80% が 2日目に再ログインしたことを必ずしも表しているわけではありません (1日目にはログインしなかったが、2日目にログインしたユーザーが 2-day RR にはカウントされているため)。

ですが、RR 同様、RR 変化率もマクロで見た際にはユーザーの継続率とほぼ同義に捉えられるため、現場ではよくユーザーの継続プレイや離脱を観察する際の指標としてよく用いられています。

RR 変化率の活用法 1. - 離脱ポイントの把握 -

上記のような性質を持っている RR 変化率ですが、現場での主な使われ方は 2つです。

1つ目は、ユーザーの継続プレイを把握するものとして。例えば何日目の RR 変化率が低いのかが分かれば、そのあたりにゲームの離脱要因があると考えることができますし、他タイトルと RR の変化率の推移を比較することによって、ゲームの初期 RR 向上が課題なのか、中長期の RR 改善が課題なのかなど、具体的にフォーカスする対象を絞っていくことができます。

また、曜日ごとの RR の変化率を追うことで、何曜日に継続の谷 (= 継続率が落ちているポイント) が来ているのかを把握することができます。例えば休祝日に人が来なくなるのか、休み明けの月曜日に人が来なくなるのかなどを把握することで、その課題を解決する具体的な施策へと落とし込んでいくことができますね。

RR 変化率の活用法 2. - 継続プレイの定義付け -

RR 変化率のもう 1つの活用法として、何日までゲームを継続すればそのユーザーを「継続ユーザー」として見なしうるかを把握する指標というとらえ方があります。

一般的に、インストールから日がたつにつれて、徐々に継続率の高いユーザーのみが残っていくことになり、それに伴って RR 変化率は徐々に 100% 前後の漸近線に向かって収束していきます。

ゲームによって、どの程度まで日数がたてばおおむね収束したと判断できるラインに達するかが異なるため、タイトルごとにこの RR 変化率の収束度合いを見て、継続ユーザーの定義を インストール 7 日後とか 10日後とかに設定していきます。

これによって定義された「継続ユーザー」という指標は、新規 / 継続 / 離脱 / 復帰 といったセグメント分けに用いたり、とあるコンテンツのユーザー規模をとらえる際に、継続ユーザーに限定して集計を行いたい場合などに活用することができます。いずれもゲームの現状をとらえるうえでは非常に重要なセグメント区分なので、そのセグメント分解規準の根拠を提供するものとしても、RR 変化率は用いられているのです。


スマホゲームでユーザーの継続を図る KPI まとめ5選

スマートフォンゲームにおいて、インストールユーザーの継続とユーザー規模の拡大は非常に重要度の高いミッションです。

1. 基本中の基本 -RR-

まずはユーザーの継続指標と言えば RR (Return Rate) が挙げられます。 RRについては以前このブログでも書いたことがあるので、そちらの記事を参考にしていただければと思いますが、汎用性や他のKPIとのかみ合わせからも、RRは継続に関して最も重要でかつ継続的にウォッチするべきKPIです。

2. RRの変化形 -RR変化率-

RRの減衰 (ないしは増加) の程度を表した指標として、RR変化率 もユーザーの継続を見るうえで重要です。

例えば、1週間経過→2週間経過の継続率はどれくらいか?1ヶ月経過→2ヶ月経過の継続率がどれくらいかを計測し、それが日を経るごとで増加 / 減少していないかを確認したりします。

RRを変化率という観点から見ることで、タイトル間でその値を比較することによって短期・中期・長期のどのタイミングで継続率が弱くなっているのかであったり、初心者ユーザーに向けた施策・長期継続を促す施策といったものがどれくらい効果があったのかを図ることも可能になります。

3. ゲームの盛り上がりを図る -n日間連続ログインUU数-

直接継続率をはかる指標ではないですが、継続して遊んでくださっているユーザーの規模の推移からゲームの継続力が落ちてきていないかであったり、施策によって継続効果を作れているかであったりを確認する指標として ログイン頻度別DAU というものを挙げることができます。

この指標はその名前の通り、例えば DAU を直近n日間におけるログイン日数別にセグメント分けし、計測するものです。 例えば、DAUを各日の直近7日間におけるログイン日数 (1~7日) で区分する...といった考え方です。nの値については、ゲームデザインや運用のサイクル、ユーザーのプレイサイクルに応じて柔軟に変えるべきですが、よく使われているのは5日であったり7日であったりします。

個人的には、ゲームのイベントは週単位で開催することが多いですし、日替わりダンジョンみたいなものも1週間でサイクルを回すものが多かったりするので、基本的には7日で見ればいいのではないかと思います。

そして、継続という意味で重要なのは、そのnが最大のセグメント、つまりn日間連続でログインしてくださっている皆勤ユーザーの数を計測するということです。これが例えば減少していないか、イベントを打つことで増加 or 減少を回避できているか、イベントの終了と同時に大きく減少していないか...などを確認することで、日々のプレイサイクルという観点からユーザーの継続をはかったり、日々の施策による継続効果をRRよりもストレートに確認することができます。

4. 日々のプレイサイクルにおける継続効果を可視化 -n日間連続ログインUUの翌日継続率-

上記 n日間連続ログインUU と連動した指標として、その連続ログインUUが翌日も再びログインしてくれる率を継続指標として使ったりもしています。例えば、7日間連続ログインユーザーの翌日継続率 といったようなものです。

用途としては、この指標の推移を追うことで曜日やイベントのサイクル、施策の強い期間・弱い期間の継続率の高さ・低さを確認してシューティングを行ったり、単純に施策の継続効果を図る際に用いています。

また、中長期のトレンドを例えば移動平均線で取って、その推移を見ることでアップデートによる機能改修によって継続率がボトムアップしているかであったり、それが逆に減少を起こしていないかを確認したりします。

対象ユーザーをn日間連続ログインユーザーに絞っているのは、施策の効果や指標の変化をよりはっきりと見やすくするためです。

5. 逆の観点から継続をウォッチする -離脱ユーザー数-

継続とは逆に、日々のユーザーの離脱数 を確認することも重要です。障害やアクシデントによる離脱の発生はもちろん、離脱ユーザー数が増えている・減っていることを確認するのもユーザーの継続を見るうえでは重要なポイントになります。

計測方法は単純で、離脱の定義 (最終ログインが n日前) に合わせて、最終ログイン日が観測日から n日前であるユーザーをその最終ログイン日ごとに集計すればデイリーの離脱ユーザー数をカウントすることができます。

おわりに

以上、スマホゲームでユーザーの継続を図るKPIを5つ紹介しました。 これらの指標を継続的にウォッチしてゲームのパフォーマンスを改善し、より長期的にユーザーに楽しんでもらえるゲーム開発・運営を目指していきましょう!