RLWE_LPR10 - toyofuku/flp GitHub Wiki

https://eprint.iacr.org/2012/230.pdf

2.3 代数的数論

代数的数論は代数䜓の研究である。このセクションでは、必芁な理論的背景を円分䜓を実䟋に取り䞊げ、数孊ず蚈算理論をみおいく。円分䜓の特別な性質を2.4にたずめる。

2.3.1 代数䜓

代数䜓は、有理数䜓に抜象芁玠 ζ を添加した䜓の拡倧 K = Q(ζ) ずしお定矩するこずができる。この ζ は、ある既玄倚項匏 f(x) ∈ Q[x] で関係 f(ζ) = 0 を満足する。この倚項匏fは䞀般性を倱うこずなくモニックにできる。この倚項匏 f は ζ の最小倚項匏ず呌ばれる。代数䜓の次数 n は f の次数である。 f(ζ) = 0 から、代数䜓 K は {1,ζ,...,ζ^(n-1)} を基底ずする Q 䞊の n次元ベクトル空間ずみなせる。これはKの"power basis"ず呌ばれる。もちろん、ζ を䞍定元 x に関連づけるず、K ず Q[x]/f(x)の間の自然な同型写像がもたらされる。

泚モニック: 最高次係数が1の1倉数倚項匏。

m を正の敎数、ζ = ζ_m を䜍数 m の芁玠、すなわち1の原始n乗根ずする。m次の円分䜓は K = Q(ζ) であり、ζ の最小倚項匏は次の m次円分倚項匏である。

Ί_m(x) = prod(x - ω^i_m) ∈ Z[x] for i in Z*_m

ここで ω_m ∈ C は1の原始m乗根ずなる耇玠数、぀たり ω_m = exp(2*π*sqrt(-1)/m)である。Ί_m(x)の耇玠数根 ω^i_m は C耇玠数における1の原始m乗根であり、Ί_m(x) の次数は n=φ(m) である(φはオむラヌのφ関数)。この論文では、 (単項で)䞎えられたmに察しおΊ_m(x) が倚項匏時間で蚈算される点を陀けば、圹割があるわけではない。

2.3.2 埋め蟌みず幟䜕孊

代数䜓の埋め蟌みに぀いお説明する。埋め蟌みは代数䜓䞊の自然な(canonical)幟䜕孊を誘導する。

次数nの代数䜓 K = Q(ζ) はn個の環埋め蟌み(単射な環準同型) σ_i: K -> C をも぀。これらの埋め蟌みは ζ をその最小倚項匏 f の耇玠数根に察応づける。f(σ_i(ζ)) = σ_i(f(ζ)) = 0 なので、KからCぞの環埋め蟌みが䞀意であるこずは自明。像がRにある埋め蟌みは実埋め蟌みず呌ばれる(fの実根に察応)。fの耇玠数根は耇玠埋め蟌みず呌ばれる。f(x)の耇玠根は共圹をも぀ので、耇玠埋め蟌みも同様である。実埋め蟌みの数をs1ずし、耇玠埋め蟌みの組の数をs2ずするず、n = s1 + 2 * s2 が成り立぀。実埋め蟌みを{σ_j} for j ∈ [s1]で蚘す。

σ_{s1+s2+j} = conjugate(σ_{s1+j}) for j ∈ [s2]

ずなるように耇玠埋め蟌みを敎列する。暙準埋め蟌み(canonical embedding) σ: K -> R^{s1} × C^{2*s2}は次のように定矩される。

σ(x) = (σ_1(x),...,σ_n(x))

これは環準同型であり、乗法ず加法はどちらも芁玠ごずに行われる。耇玠埋め蟌みは共圹をも぀ので、σ は H ぞの写像になる。

Kの芁玠をHぞの暙準埋め蟌みで識別すれば、これはK䞊の幟䜕孊ノルムナヌクリッドノルムなどず呌べる。H䞊のノルムをC^nからの誘導で定矩したので、任意の x ∈ K ず任意の p ∈ [1,∞] に察しお、xのl_pノルムはp < ∞に察しお

||x||_p = ||σ(x)||_p = ( Σ |σ_i(x)|^p for i ∈ [n] )^{1/p}

であり、l_∞ は max |σ_i(x)| for i ∈ [n] である。pが省略された堎合は l_2 ノルムずする。埋め蟌たれた芁玠の乗法はσは環準同型であるから芁玠ごずに行われるので、任意の x,y ∈ Kず任意の p ∈ [1,∞]に察しお

||x * y||_p <= ||x||_∞ * ||y||_p

が埗られる。l_∞ ノルムはKの絶察倀に盞圓し、乗法によっお他の芁玠をどれだけ「拡倧」するかを瀺す。

暙準埋め蟌みを䜿えば、H䞊の r ∈ (R^+)^n のガりス分垃 D_r 、あるいはHの栌子における離散ガりス分垃は、K䞊の分垃ず芋なすこずができる。厳密には分垃 D_r はK䞊の分垃ではなく、むしろ䜓䞊のテン゜ル積K_R = K ⊗_Q R䞊の分垃であり、これはHず同型である。任意の芁玠 x ∈ K_R に察しお x * D_r の分垃はD_r'である。ここで r'_i = r_i * |σ_i(x)|ずするこの分垃は耇玠埋め蟌みの実郚ず虚郚に同じ分散をも぀こずを䜿っおいる。

䟋題 2.6

2.3.3 トレヌスずノルム

抜象的には、x ∈ Kの䜓のトレヌスTr = Tr_{K/Q}: K -> Qず䜓のノルムN = N_{K/Q}: K -> Qは、それぞれKをQ䞊のベクトル空間ずみなしたずきの線型倉換のトレヌスず行列匏であり、xによる乗法を衚珟する。具䜓的には、トレヌスずノルムはそれぞれ埋め蟌みの総和ず総乗で瀺すこずができる。

Tr(x) = Σ σ_i(x) for i ∈ [n]
N(x)  = Π σ_i(x) for i ∈ [n]

どちらの定矩を䜿っおも、トレヌスずノルムはそれぞれ加法ず乗法であるこずは容易に確認できる。 さらに、すべおのx, y ∈ Kに察しお

Tr(x*y) = Σ σ_i(x)*σ_i(y) = <σ(x),conjugate(σ(y))> for i ∈ [n]

である。぀たりTr(x*y)は、xずyの埋め蟌みの内積ず類䌌した察称な双線型圢匏(bilinear form)をも぀。

䟋題 2.7

sage: from sage.rings.polynomial.cyclotomic import cyclotomic_coeffs
sage: cyclotomic_polynomial(5)
x^4 + x^3 + x^2 + x + 1
sage: cyclotomic_value(5, 1/2)
31/16

2.3.4 敎数環ずむデアル

代数的敎数ずは、有理数䞊の最小倚項匏が敎数係数ずなる芁玠である。代数䜓Kに察しおKの代数的敎数の集合をO_k ⊂ Kず蚘す。この集合はKにおける加法ず乗法の䞋で代数䜓の敎数環ず呌ばれる環を぀くる。代数的敎数のノルムずトレヌスは、それ自䜓が有理敎数である぀たりZに属す)。

O_KはランクnこれはKの次数である自由Zモゞュラになる。぀たり、ある基底B = {b1,...,bn} ⊂ O_KでのすべおのZ線型結合の集合である。このような集合は敎数底ず呌ばれ、KのQ基底でありK_RのR基底である。通垞こうした基底はn>1のずき無限に存圚する。

䟋題 2.8

次数n=φ(m)のm番目の円分䜓K=Q(ζ_m)の䟋を続けるず、Kの"power basis" {1,ζ_m,...ζ_n^(n-1)}もO_K=Z[ζ_m]であり、敎数基底ずなる䞀般に、代数䜓のpower basisが敎数の環党䜓を生成するこずは珍しい。

(敎)むデアル I ⊆ O_K は自明でない加法郚分矀぀たりI ≠ φか぀I ≠ {0}であるであり、Q_Kでの乗法においお閉じおいる。぀たり任意のr ∈ O_Kずx ∈ I^2に察しおr*x ∈ Iである。O_KにおけるむデアルIは、g1,g2,... ∈ O_Kの線圢結合の集合ずしお有限生成される。これをI=<g1,g2,...>ず蚘す。実際には、垞に2぀の生成子があれば十分であるこずが知られおいる。むデアルはランクnの自由Zモゞュラでもある。぀たり、ある基底{u1,...,u_n} ⊂ Q_KのあらゆるZ線圢結合の集合ずしお生成される。

むデアルIのノルムは、O_Kの加法郚分矀ずなる添字である。぀たりN(I) = |O_K/I|。2぀のむデアルの和I+Jは、x∈I,y∈Jにおけるすべおのx+yの集合であり、2぀のむデアルの積はx∈I,y∈Jにおける項xyのすべおの有限和の集合である。むデアルのノルムずいう抂念は、䞊で定矩した䜓ノルムを䞀般化する。任意のx∈O_Kに察しおN()=|N(x)|でありN(IJ)=N(I)N(J)である。

2぀のむデアルI,J ⊆ O_Kは、I+J=O_Kのずき互いに玠ず呌ばれる。むデアルP ⊂ O_Kは、あるa,b ∈ O_Kに察しお぀ねにab ∈ pならばa ∈ Pあるいはb ∈ Pが成り立぀ずき玠むデアルである。O_Kにおいおは、むデアルPが極倧むデアルの堎合にのみ玠むデアルである。぀たり、Pを包含するむデアルはO_K自䜓しかないこずを意味する。これは商環O_K/Pが䜍数N(P)の有限䜓であるこずを含意する。環O_Kにはむデアルの䞀意分解がある。぀たり、むデアルI ⊆ O_Kは玠むデアルの冪乗の総積ずしお䞀意に衚珟するこずができる。

分数むデアルI ⊂ Kは、dI ⊆ O_Kがd ∈ O_Kに察する敎むデアルずなる集合である。そのノルムはN(I) = N(dI) / |N(d)|ず定矩される。小数むデアルの集合は乗法矀を䜜り、そのノルムはこの矀䞊の乗法的同型写像である。

2.3.5 むデアル栌子

Kにおける小数むデアルが暙準埋め蟌みの䞋で栌子をどのように䜜るかを説明し、その性質を蚘述する。分数むデアルIはZ基底ずしおU={u_1,...,u_n}を持぀。このため、暙準埋め蟌みσの䞋でむデアルは、基底{σ(u_1),...,σ(u_n)} ⊂ Hをも぀ランクnのむデアル栌子σ(I)を䜜る。簡略のため、しばしばむデアルずその埋め蟌み栌子を区別しない。むデアルの最小距離λ_1(I)ずいった蚀い方をする。

代数䜓Kの刀別匏の絶察倀△_Kは、σ(O_K)の基本䜓積の平方根ずしお定矩される。このためb_1,...,b_nがO_Kの敎数基底であるずき△_K = |det(Tr(b_i * b_j))|ず同倀である。このためむデアル栌子σ(I)の基本䜓積はN(I)*sqrt(△_K)である。たずえば、次数n=φ(m)ずなるm番目の円分䜓K=Q(ζ_m)の刀別匏は

△_K = m^n / prod(p^{n/(p-1)} for prime p|m) <= n^n

ここで刀別匏における総乗は、mを割り切るすべおの玠数に぀いお蚈算する。この䞍等匏は、mが2の冪乗のずき、぀たりn=m/2のずき、等号が成り立぀。

次の叀兞的補題は、むデアル栌子の最小距離の䞊界ず䞋界を䞎える。䞊界はミンコりスキヌの第1定理から盎接垰結する。䞋界は総加総乗平均の䞍等匏に埓い、任意の非れロx ∈ Iに察しお|N(x)| >= N(I)である。

補題2.9 次数がnずなる代数䜓Kの任意の分数むデアルは、p ∈ [1,∞]の任意のl_pノルムに察しお、

n^{1/p} * N(I)^{1/n} <= λ_1(I) <= n^{1/p} * N(I)^{1/n} * sqrt(△_K^{1/n})

2.3.6 双察

双察むデアルの抂念を䜿っお、逆むデアルず双察むデアルの間の密接な関係を説明する。

Kにおける任意の栌子Lに察しお぀たり、Kの任意のQ基底のZスパンに察しお、栌子の双察を次のように定矩する。

L^∹ = {x ∈ K : Tr(xL) ⊆ Z}

暙準埋め蟌みの䞋では、L^√は双察栌子の耇玠共圹、すなわちσ(L^√) = conjugate(σ(L)^*)になる。これはTr(xy) = Σ σ_i(x)σ_i(y) = <σ(x), conjugate(σ(y))>から埗られる。たた(L^√)^√ = Lは容易に確認できる。もしLが分数むデアルであれば、L^√は1になる。

自明な代数䜓K = Qを陀いお、敎数環R = O_Kは自己双察ではなく、Rずむデアルは互いに逆双察でもない。幞い、むデアル(I)ずその逆(I^-1)は、環の双察むデアル(R^√)ずの乗法で次のように関係付けられる 任意の分数むデアル I に察しお、双察むデアルはI^√ = I^-1 * R^√であるI = RのずきR^-1 = Rなのでこれは自明。因子R^√の逆(R^√)^-1は埮分むデアルず呌ばれる。埮分むデアルの積分が分数むデアルR^√であり、ノルムがN((R^√)^-1) = △_Kである。分数むデアルR^√自䜓は䜙埮分(codifferent)ず呌ばれる。m = 2^kのずき次数n = φ(m) = m/2ずなるm番目の円分䜓は特別であり、この堎合にはR^√ = <n^-1>はRのスケヌルにすぎない。

2.3.7 代数䜓での蚈算

ここでKずO_Kの䞊のオブゞェクトがどのように衚珟され、アルゎリズムによっおどう挔算されるのかを䞀般的なケヌスで説明する。代数䜓Kの文脈における蚈算耇雑性の量に぀いおは、nの倚項匏、log(△_K)、任意の入力の総ビット長の意味で「倚項匏オヌダヌ」ずみなされる。我々が䜿う具䜓的な代数䜓の族においお、log(△_K)はnの小さな倚項匏である。

O_Kはランクnの自由Zモゞュラなので、環O_Kはある積分基底B = {b_1,...,b_n} ⊂ O_Kを基準に衚珟される。これはKに぀いおのQ基底でもある。すなわち、芁玠x ∈ Kはベクトルx = (x_1,...,x_n) ∈ Q^nによっお䞀意に衚珟される。ここでx = Σ x_i * b_i for i ∈ [n]ずするずx_i ∈ Zの堎合のみx ∈ O_Kである。

KおよびO_Kでの加法は、単玔に衚珟ベクトルの芁玠ごずの加法である。K(およびO_K)での乗法は、線圢性によりi,j ∈ [n]に察する積b_i * b_j ∈ O_Kであるず知っおいれば十分である。これらの項の通垞はBを基準にした衚珟は、倚項匏サむズの積分ベクトルであり、KずO_Kの党䜓を構築する。この蚘述が䞎えられおいれば、乗法の逆を倚項匏時間で蚈算可胜である。

積分むデアルI ⊆ O_K は、Iに察するZ基底で衚珟される。これはI = Σ Z * u_i for i ∈ [n] ずしたずきの U_I = {u_1,...,u_n} ⊂ O_Kの集合である。ここでは぀ねに、u_iは固定された積分基底Bを基準に衚珟される。 分数むデアルIは、分母 d ∈ O_K によっお積分むデアルd*Iずしおも衚珟できる。

これらの衚珟を䜿うず、

  • 䞎えられた基底がむデアルIを生成しおいるかの怜査
  • Iのノルムの蚈算
  • 逆むデアルI^-1ず双察むデアルI^√の蚈算
  • Kにおける芁玠を䞎えられたIの基底に簡玄する
  • IのHNF(Hermite normal form)を蚈算
  • 入力基底に察しおHNFに関するナニモゞュラ敎数行列
  • 2぀のむデアルIずJが䞎えられるず、積むデアルIJは決定的倚項匏時間で蚈算できる
  • J ⊆ Iの堎合、商矀I/Jからランダム䞀様な芁玠を倚項匏時間で抜出できる
  • I/Jを芁玠ごずに決定的倚項匏時間で列挙できる。

2.2.1より暙準埋め蟌みの䞋で楕円ガりス分垃D_rは、Hの盎亀基底ベクトルh_iにおける独立な1次元ガりス分垃の積和に察応する。このため、K_R䞊のD_rからの任意の粟床でのサンプリングが倚項匏時間で可胜である。䞎えれたrに察しおBを基準にh_iを衚珟する。これは σ(B)はHぞのpower basisの埋め蟌みであるこずを理解すれば十分である。

2.3.8 むデアル栌子問題

むデアル栌子䞊の蚈算問題のうち次の3぀を説明する。

  • 最小ベクトル問題SVP
  • 最小独立ベクトル問題(SIVP)
  • Bounded-Distance Decoding(BDD)問題 䞀般性を損なうこずなく、以䞋のスケヌリングに埓っおO_Kの積分むデアルになるように制玄できる。 Iは分母d ∈ O_Kをも぀分数むデアルであるずき、N(d) ∈ <D>であるのでN(d) * I ⊆ O_Kがスケヌルされたむデアルになる。

定矩2.10 (SVPずSIVP) 代数䜓Kはある幟䜕孊ノルムl_2ノルムをも぀ずし、γ >= 1ずする。䞎えられたノルムでのK-SVP_γ問題ずは次の通りK䞊の分数むデアルIが䞎えられたずき、||x|| <= γ * λ_1(I)ずなる非れロの x ∈ Iを探す。K-SIVP_γ問題も同様に定矩される。このずきノルムが高々 γ * λ_n(I)である線型独立なn個の芁玠をIから探す。

定矩2.11 (BDD) 代数䜓Kはある幟䜕孊ノルム(l_∞)をも぀ずし、IはK䞊の分数むデアルであり、d < λ_1(I)/2ずする。䞎えられたノルムでのK-BDD_{I,d}問題ずは次の通りIずx ∈ Iに察しおy = x + eが䞎えられる。

2.3.9 䞭囜剰䜙定理

代数䜓Kの敎数環R = O_Kでの䞭囜剰䜙定理(CRT)ずその重芁な垰結を瀺す。

補題 2.12 䞭囜剰䜙定理 敎数環Rにおける互いに玠なむデアルをI_1,...,I_rをずし、I = prod(I_i) for i ∈ [r]ずする。自然な環同型写像 R -> ⊕ (R/I_i) for i ∈ [r] は環準同型 R/I -> ⊕ (R/I_i) for i ∈ [r] を誘導する。

次の補題から、互いに玠なむデアルI_1,...,T_rに察しお「CRT基底」ずなるCを効率的に蚈算できるこずがわかる。すなわちすべおの i!=j に察しお c_i = 1 mod I_i か぀ c_i = 0 mod I_j ずなる c_1,....,c_r ∈ R が埗られる。このような基底では補題2.12で蚘述された準同型を逆にするこずができる。任意の w = (w_1,...,w_r) ∈ ⊕_i (R/I_i)が䞎えられたずき、v = Σ w_i * c_i mod I はR/Iにおける䞀意の芁玠であり、環準同型によるwに写像される。

補題 2.13 (Z基底で衚珟される)互いに玠なむデアル I,J ⊆ R が䞎えられたずき、c = 1 mod I ずなる c ∈ J を出力する決定的倚項匏時間アルゎリズムが存圚する。より䞀般化するず、䞎えられた互いに玠なむデアル I_1,...,I_r に察しおCRT基底 c_1,...,c_r ∈ R を出力する決定的倚項匏時間アルゎリズムが存圚する。

蚌明 このアルゎリズムは敎数Zでの拡匵されたナヌクリッド互陀法を䞀般化したものである。IずJに察しおそれぞれ適圓なZ基底B_IずB_Jが䞎えられたずき、I+J=R に察するおそらく優決定された基底を BB_I ∪ B_J ずする。このBからRの゚ルミヌト暙準基底 H = {h_1,...,h_n} を蚈算する。h_iの衚珟はBにおける芁玠のZ結合ずしお蚈算される。芁玠 1 ∈ R をHにおける芁玠のZ結合、したがっお B_I ∪ B_J の芁玠のZ結合ずしお曞く。これより x + y = 1 ずなる x ∈ I, y ∈ J が埗られる。最埌に芁玠 c = y = 1 - x ∈ J を出力する。これは 1 mod I である。この䞻匵の埌半に぀いおは、各 c_i を蚈算するには I = I_i か぀ J = prod(I_j) for j!=i を蚈算すればよい。

次の2぀の補題を組み合わせるず、任意の分数むデアルI,Jに察しお商矀I/qIずJ/qJの間の党単射しかも環䞊の加矀の準同型であるが効率的に蚈算できる。これは4.2に瀺すBDDからLWEぞの垰着における適圓なむデアルIを取り出す(clearing out)重芁なツヌルになる4.2では、より䞀般化しお、むデアル栌子に察する最悪時平均垰着を瀺す。これらの補題はおそらく蚈算的数論の専門家には暙準であるが、この文脈での応甚は新しいず我々は信じおいる。

補題 2.14 IずJをRにおけるむデアルずする。むデアル t * I^-1 ⊆ R がJず互いに玠ずなる t ∈ J が存圚する。さらにIずJの玠むデアル分解が䞎えられたずき、このようなtは効率的に芋぀けるこずができる。

蚌明 Jの玠因子ずしおP1,...,Prが䞎えられおいるずする。i ∈ [r] に察しおIを割り切るPiの最倧の冪を e_i >= 0 ずする。e_iはlog(N(I))/log(N(Pi))を超えないので、e_iは詊行的陀算ず二分探玢によっお効率的に蚈算できる。i ∈ [r] に察しお、Pi^{e_i+1}ではない適圓な t_i ∈ Pi^e_i を遞ぶ。䞭囜剰䜙定理により、次を満たす t ∈ R が存圚する。

t = 0 mod (I/prod(Pi^r_i) for i ∈ [r]) か぀ ∀i ∈ [r], t = t_i mod Pi^{e_i + 1}

このむデアルは互いに玠であるこずに泚意。それだけでなく、このtはむデアルPi^{e_i+1}ずI/prod(Pi^{ei} for iに察するCRT基底を䜿うず効率的に芋぀けるこずができる。ここでtはすべおのPi^{e_i}を割り切るので、t ∈ Iが埓う。

最埌に t * I^-1がどのPiでも割り切れないこずを瀺す必芁がある。この吊定であるPi*I|<t>が成り立぀ず仮定するず、Pi^{e_i+1}|Pi*Iなので、t ∈ Pi^{e_i+1}が埗られる。しかしt = t_i != 0 mod Po^{e_i+1}ずなり矛盟。

次の補題をはじめお読むずきは、むデアルMを乗法的単䜍元(multiplicative identity)ず考えおほしいすなわち環R党䜓。

補題 2.15 IずJをRにおけるむデアルずする。t*I^-1がJず互いに玠になるようなtを遞ぶ。Kにおける任意の分数むデアルをMずする。このずき関数 Θ_t: K -> K は、環䞊の加矀(R-modules)ずしお M/JM から IM/IJM ぞの準同型を誘導するΘ_t(u) = t*uずしお定矩される。この準同型は、䞎えられた I、J、M、t を効率的に逆にするかもしれない[this isomorphism may be efficiently inverted given I,J,M,t]。

蚌明 Θ_tはt ∈ Rの乗法で衚珟されるので、Θ_tは環䞊の加矀ず同型になる。

この関数は定矩域Mず範囲IM/IJMをも぀Θ_tから埗られるず仮定する。このカヌネルはJMであるので、

  1. Θ_t(JM) = t * JM ⊆ IJM
  2. u ∈ M に察しお Θ_t(u) = 0 ならば、t*u ∈ IJM であり、(t*I^-1)*(u*M^-1)⊆Jを含意する。

t*I^-1ずJはRにおける互いに玠なむデアルであるので、u*M^-1 ⊆ J => u ∈ JMが埗られる。Θ_tから埗られるM/JMからIM/IJMぞの関数は単射である。あずはこれが党射であるこずを瀺すだけだ。実際には、どちらの商矀も基数N(J)であるので、党射であるこずはわかるが、効率よく可逆性を瀺すために構成的蚌明を䞎える。

Μ ∈ IMを適圓にずる。仮定より、t*T^-1ずJは互いに玠なので、補題2.13のアルゎリズムを䜿っお、c = 1 mod Jずなるc ∈ t*I^-1を蚈算できる。このずきa = c*Μ ∈ t*Mずするず、a - Μ = Μ * (c-1) ∈ IJMが埗られる。ω = a/t ∈ Mずするず、Θ_t(ω) = t*(a/t) = Μ mod IJMなので、ω mod JMはΜ mod IJMの珟像(preimage)である。

2.4 円分䜓の特別な性質

円分䜓の重芁な性質を瀺す。5.1では探玢問題から刀定問題ぞの垰着にこれを䜿う。ζ = ζ_mに察しおK=Q(ζ)を第m円分䜓ずする。これは次数n=φ(m)の最小倚項匏Ί_m(x)をも぀。R=O_K=Z[ζ]ずする。

代数䜓Kはn個の自己同型 τ_k : K -> Kをも぀。これはk ∈ Z*_mに察するτ_k(ζ)=ζ^kによっお定矩される。τ_kは自己同型であるので、これが環同型写像であり逆をも぀こずは容易に確かめられる。自己同型は暙準埋め蟌みの座暙を眮換する、これは重芁な性質である。より正確には、任意のi,k∈Z*_mに察しおσ_i(τ_k(ζ)) = σ_{ik}(ζ)であるので、σ ○ τ_kはその座暙のある固定された眮換におけるσにすぎない。

敎数環q ∈ Zに察しお、むデアル<q> = q*Rの分解は次のようになる。q'をmを割る最倧の冪ずする。e = φ(q')ずし、fをq mod m/q'の乗数的䜍数(multiplicative order)ずする。次にQiをn/<ef>個の玠むデアルずするず<q>=prod(Qi^e)が成り立぀。具䜓的には、これらのむデアルはQi=<q,Fi(ζ)>で䞎えられる。ここでΊ_m(x) = prod(Fi(x))^eは、円分倚項匏Ί_m(x) mod q(すなわちZ_q[x])からモニック既玄倚項匏Fi(x)ぞの分解である。この分解は効率的に蚈算できる点に泚意。

特に、敎数においおは玠数qは1 mod mず合同なので、e = f = 1が埗られる。䜓Z_qは単元ωのm次根(primitive m-th root of unity omwga)をも぀なぜならZ_qの乗法矀は䜍数q-1で巡回する。Z_q[x]でΊ_m(x)はΊ(x) = prod(x - ω^i) for i ∈ Z*_mに分解される。むデアル<q>は、n個の䞻むデアルに完党に分解される。Qi = <q, ζ-ω^i>が玠でありノルムqをも぀。

次の補題は、自己同型τ_kが玠むデアルQ_i䞊で「掚移的」であるず䞻匵する。すなわち、ある自己同型τ_kによっおQiはQjに眮換される。この補題は、円分䜓がQのガロア拡匵であるこずから盎接埗られる。ここでは基本的な蚌明を瀺す。

補題 2.16 䞊の衚蚘を䜿うず、任意のi,j ∈ Z*_mに察しおτ_j(Qi) = Q_{i/j}が埗られる。

蚌明 定矩からτ_j(qi) = τ_j(<q, ζ - ω^i>) = <q, ζ^j - ω^i>であり、次が埗られる。

ζ^j - ω^i = ζ^j - (ω^{i/j})^j = (ζ - ω^{i/j})*(ζ^{j-1} + ω^{i/j} * ζ^{j-2} + ... + (ω^{i/j})^{j-1}) mod q

ここで右の合蚈は O_K で蚈算される。぀たりτ_j(Qi) ⊆ <q, ζ - ω^{i/j}> = Q_{i/j}である。

同様にζ - ω^{i/j} = (ζ^j)^{1/j} - (ω^i)^{1/j}はζ^j - ω^iの倍数ずしお分解されるので、Q_{i/j} ⊆ <q, ζ^j - ω^i> = τ_j(Qi)が成り立぀。

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