Kadanoff&Baym 本 - non-equilibrium/NEGF GitHub Wiki

やっぱりKadanoff-Baym方程式の名前になったひとたちの著作も読んでみないとね,ということで読むことにした. でも日本語訳を読んでいく. しかしどう読むかはかなり悩ましい. 平衡状態についての理論は正直興味がないので,適当に読み飛ばしながら読み進めなければならないが,非平衡の理論が平衡状態の理論と同じ形式で定められていることを鑑みると,あまり無視もできない. とりあえず当たりをつけるべく,ざっと眺めてみることにする.

1.数学的な緒論

1.1 基本的な諸定義

「数学的」と書いてあるからただ定義が述べられているだけかと思ったら,Green関数の物理的な解釈:多粒子の平衡系に粒子をひとつ加えるか,ひとつ取り去ったときに起こる擾乱の伝搬,が書いてあって,さすがだなと感心した.

1.2 虚時間の境界条件

時刻変数の複素化をする. いきなりgreater関数の時間依存性が出てきた… ぱっと見はいかつい. greaterとlesserの関係式(1.9)を出す.

(1.9)と書けると,(1.13)とも書けてしまうので,(1.15)の書き換え[greater/lesserを分布関数とスペクトル関数に分ける]も導けることになる. 使った式は,消滅演算子と粒子数演算子の交換とtraceの巡回不変性だけ.

Aがスペクトル関数であることは,交換関係から満たされる.

具体例として自由粒子系のGreen関数を考える. 自由粒子だから解けてしまって(1.19)の表式が得られる.

2 G^>とG^<に含まれる情報

2.1 Gに含まれる粒子の力学的情報

見出しに「G」と書いてあるからcausalグリーン関数のことかと思ったらlesser/greater成分のことらしい. lesser成分がスペクトルと分布に分けられることが書かれている. 確かにlesser成分は(p,ω)の平均密度と書けるのは常に正しいし,そうなると平均密度がスペクトルと分布の積で書けることも自然か.確かに. (1.15)からgreater成分が(2.5)のようになることは言えるけど,前提として周期性を使っているのよな.うーん.非平衡では一般には成り立たない気がする.

それはそうと,「G^>(p,ω)は系に運動量pの粒子を一つ余分に加えて,系のエネルギーがω増加するという過程の平均遷移確率に比例する」とか「系に加えられた粒子が入ることのできる状態の密度を評価した量にあたる.つまりG^>(p,ω)は系に加えられた運動量p,エネルギーωの余分の粒子に関する有効状態密度と見なされる」とかは確かに,といった感じで,同様の考察からG^<(p,ω)は粒子を取り去るときの遷移確率になる.

これから詳細つりあいの条件が導かれる(2.6).これは熱平衡状態を採用したことからの直接の帰結.

2.2 Gに含まれる統計力学的な情報

力学的な情報のみならず系全体の統計力学的な情報もすべて含まれている. 粒子密度の期待値がG^<そのもので表されることを見たが,同様にして全エネルギーについてもG^<を用いて表すことができる. そのために場の生成演算子と消滅演算子の運動方程式の和をとる. それから運動エネルギーの両辺に加えると,全エネルギーの表式が得られ,それをG^<(p,ω)で書くことができる(2.9).

熱力学量を計算したければ,大正準分配関数を計算できるようになればよい. 熱力学極限では圧力と大正準分配関数との関係は(2.12)のように与えられるが,これ(圧力を求めて大正準分配関数を計算するパスは)はあまり実用的ではない. より実用的な方法は,相互作用項に無次元のパラメタを導入して,パラメタについて積分することから求める方法である.(高田康民本にも同じような方法が書いてあった気がする.ヘルマン–ファインマンの定理だっけ?(記憶が曖昧)

3章 Hartree近似とHartree-Fock近似

飛ばします. むしろここからが本番でした.

3.1 運動方程式

(3.1)から(3.2)を導出する過程は,なるほどだった. ポイントは「時間順序積と時間微分は可換ではない」ということか. でももう少しスマートに示せないだろうか? (どうも叙述的な導出に思える) → 「時間順序積の定義に戻れば,Theta関数があって,それに微分がかかるせい」ということに他ならないか. こっちの方が明快.

(3.2)は時間について1階の微分方程式なので,初期条件(境界条件)を決める必要がある. その境界条件として,(1.10)の擬周期境界条件を課すことにする. (ただこれは熱平衡条件から出てきた式なので非平衡系では用いられないはず…?) この条件を自然に満たすようなFourier級数展開はMatsubara Green関数G(in_ν)の導入に他ならない.

しかしながら知りたいのはスペクトル関数. Lehmann表示に移れば,スペクトル関数とMatsubara Green関数の対応が明らかになる. さらに実軸から微小量だけ虚軸にズレた点での値の差からスペクトル関数が求まる.

3.2 自由粒子系

一番簡単な近似は相互作用を無視してしまう近似をすること. そうすると運動方程式が解けて,Green関数が求まり,スペクトル関数も求まる. そこからlesser/greater成分を計算すれば,他の物理量の計算もできるという算段.

3.3 Hartree近似

相互作用を無視しない場合の話に移る. ここでは2粒子Green関数で4点バーテクスを無視した近似(Hartree近似)を施した場合を考える.

この本で「媒質」と表現されているものは,相互作用のある多体粒子系のこと. 2粒子Green関数で言うと,1', 2'で付け加えられた粒子はそれぞれ「媒質」の粒子と相互作用する. Hartree近似とは「媒質の粒子とは相互作用するが,1'と2'で付け加えた粒子同士は相互作用しない」という近似. この近似を施すと平均場として電子相関が取り込まれる.

平均場なので運動方程式が解ける. それ以降の計算は自由粒子系の場合と同様に行える. ただし(3.14)に従って平均場は自己無撞着に計算されなければならない. (スペクトル関数Aの式(3.13)の中に平均粒子密度nが入っていて,(3.14)のnの式にAが入っているので,矛盾のないようにAとnを決めなければいけないという意味.)

気体の状態方程式の導出やHartreeのオリジナルな仕事について触れらているが飛ばす.

3.4 Hartree-Fock近似

粒子の識別が不可能であることを考えてHartree近似を改良する. つまり,G_2において1'と2'で付け加えられた粒子が1,2で取り除かれるとき,(3.25)のように入れ替えた場合も考慮に入れる. この近似がHartree-Fock近似となる. (1粒子Green関数だけで理解するよりも2粒子Green関数を導入して説明した方が分かりやすいと思った)

4章 粒子間の衝突の影響

4.1 1粒子状態の寿命

(ここの説明はイマイチな感じ)

スペクトル関数関数が,Hartree近似とHartree-Fock近似の範囲内では,相互作用のない多粒子系と同じくデルタ関数のままになっている. Hartree近似もHartree-Fock近似も,全く相互作用を考えていないわけでもないから,これはこれで謎なんだけど. 媒質との相互作用は運動量を保存するからbroadeningを生まないということかな. (4.1)式みたいに,運動量 p の電子を時刻 t' に付け加えて,時刻 t に取り除いたとき元の状態に戻る期待値を計算すると,すなわちGreen関数の greater 成分を計算すると,スペクトル関数によるlevel broadeningを理解できる. (4.1)の最右辺において,スペクトル関数にデルタ関数を代入すると,| t - t' | → ∞ にしても振動し続ける期待値を与えるが,現実問題ではゼロに落ち着くべきだろう. すなわち,exp[- Γ(p) |t-t'|] のように減衰するはずである. (この減衰がないと,時刻 t' に加えられた粒子による擾乱が緩和せずにいつまで経っても熱平衡状態に落ち着かないことを意味している.)

古典気体については Γ(p) は簡単に(4.2)式のように見積もることができる.

デルタ関数では減衰を生じさせないが,連続的に変化するような任意のスペクトル関数を考えれば急速な減衰を引き起こす.らしい. (そりゃそうか.むしろデルタ関数が特異なだけだから.) 例として,Lorentz型を考えてみる(4.3). broadening Γ(p)が温度によるぼけ(〜 kB T)に比べて十分に狭い(Γ << kB T)なら,f(ω) の ω を f(E(p)) に置き換えてしまえるので,積分を実行できる. (計算して確かめる.確かにそうなった.)

4.2 Born 衝突近似

有限の寿命が生じるような近似を考える. あくまで2粒子Green関数で議論していくらしい.

(4.4)のように,1度だけ相互作用する場合を考える. (4.5)式のような曖昧な表現があるのはとても物理の本らしい. 色々ごちゃごちゃ考えて(4.6)式を得る. 1次Born近似に相当する.

運動方程式(3.2a)に代入してBorn散乱近似の範囲内での運動方程式(4.7)を得る. Born散乱近似の範囲内で自己エネルギーを書き下したものが(4.8)-(4.10)になる. 空間成分に対してFourier変換をすると(4.11), (4.12)を得る. (4.12)式は運動量保存や衝突断面積などが現れる.

運動方程式を解いて,G^<, G^>を求めることを考えるが,そのためには自己エネルギーについてもう少し詳しく議論する必要がある.

4.3 Σc, Σ^>, Σ^<, Γ および A の構造

Σc も G と同じように2つの解析関数から構成されていることに気付くらしい. 全部 G で書けているので,それを適当に分解する,ということらしい. 確かに自己エネルギーが G で書ければ,必ずlesser/greater成分に分けることは出来るか.ふむ.

Γを(4.18)と定義すると,(4.17)から(4.18a)のように分離できる. でもこれはやっぱり擬周期性を使ってないと出ない.うーん.

それから後は,Matsubara振動数の表示に移って(4.20)を得てしまえば,スペクトル関数を計算するのも straightfoward にできる.

4.4 Born 衝突近似による1粒子状態の寿命

具体的にBorn近似の場合の寿命を計算してみる. この本のすごいところは,面倒な計算を一切しないというところにあるのかもしれない. (4.16a), (4.16b)を与えておいて計算せずに答えの雰囲気だけ書いてある. (解析的に解けないから仕方ないのか) 色々と考察しているが,後付け感がある. いや,これを物理的直感と呼ぶのかもしれないけど.

4.5 Boltzmann 方程式の解釈

Green関数法とBoltzmann方程式の対比. 外場の無い場合のBoltzmann方程式を考えれば,衝突項がその時間変化を担っていることになるので(4.23)が得られる. 自己エネルギーを使って(4.25)のように書けるのはシンプルで良い. それを解いて(4.26)を示しているのも良さそう. (計算をちゃんと追ってないけど)

5 Green 関数の近似計算技法

さすがにこの部分はさらっと流すだけで十分だと思われる. 真面目にやるとSchrodinger描像とか相互作用表示とか色々と導入しないといけないのを,(5.1)をいきなり導入してしまって省いている. で,(3.2)に「似た」式として(5.4)を挙げている.

汎関数微分をかなり使っている. あまり馴染みがない.

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