Haug&Jauho 本 - non-equilibrium/NEGF GitHub Wiki

主にPat II "Nonequilibrium Many-Body Theory"をまとめる. 日本物理学会誌の書評にある通り,非平衡Green関数法の導入部分はコンパクトにまとまっている分,あまり親切ではないように思う.

まとめたもの:PDF

以下は感想兼疑問箇所洗い出し.

4 Contour-Ordered Green Functions; 径路順序Green関数

4.1 General Remarks; 総説

「平衡状態のGreen関数に対する摂動論を構築する上での中心的量は,S行列S(∞, -∞),すなわち十分遠い過去から十分遠い未来への時間発展演算子である. しかし,非平衡状態においては系が,漸近的に長い時間で始状態に戻る保証はどこにもないので,S(∞, -∞)を用いることは避けるべきである.」

疑問:非可逆性? #issue

「そもそもの観測量の期待値の定義にいくつかの選択がありうる. ここでは,密度行列を,熱平衡時のものを用いていたが,他にも時間依存した方法があるらしい. ちなみに,熱平衡時の密度行列を採用する意味は「熱力学的自由度は,時間依存ハミルトニアンの速い振動には即座に追従しない」ということらしい.」

観測量の期待値の定義問題 #issue

4.2 Two Transformations; 2つの変換

経路に沿った時間発展と経路順序演算子の導入して,観測量の期待値をそれらを使って書き換える. (4.4)式と(4.7)の等価性を示した方法が,J. Rammerの修論を参考にしているらしい.すごい.

経路順序Green関数の登場. 経路に沿って時間発展させる. 文章量を考えると仕方ないけど,経路上の時刻と実軸上の時刻の変換があまり明確ではない感じがする. Kamenevあたりが細かく書いていた気がする.

経路順序Green関数を2つの実時間のbranchに分離することを考えると,4通りの場合分けが生じて,それぞれに対応するGreen関数が導入される. 残念なことに,図4.2にC1とかC2が記されていない. (4.15)を見る限り, t1, t1' \in C1 などと書かれているので,C1とC2は実軸上にあると思われる.

(time-ordered) + (antitime-ordered) = (greater) + (lesser) という関係があるために,4つのGreen関数はお互い独立ではない. そのために自由度の選び方に任意性があり,幾つかの流儀があるらしい. まとめられたらまとめておきたい.

どのGreen関数を使うかの流儀が本によって異なりそうなのでまとめておきたい #issue

ここではgreater/lesserの他に,先進/遅延Green関数を用いることにする. これらも完全に独立な関数ではなくて, (greater) - (lesser) = (retarded) - (advanced)という関係がある.

また,肝心の計算(4.22)→(4.24)が端折られているので, J. Rammer: Rev. Mod. Phys. 63, 781 (1991) を確認しないといけない.

計算(4.22)→(4.24) #issue

4.3 Analytic Continuation; 解析接続

(4.24)で形式的には解けているけど,経路上の積分そのままでは計算を行うとき困ってしまう. そこで実時間の積分に書き換えることを考える. この書き換えは「解析接続」と呼ばれているらしい. (数学における解析接続とは意味合いが異なりそうに思えるが,どうなんだろう.) この解析接続にも多くの異なる定式化が存在するらしい. ここではLangrethによるKadanoff-Baymの方法を採用する.

"As shown in Sect. 4.3"とあるけど,これは4.2の間違いだと思われる.

Langrethの定理.

(4.29)は,やはり経路の取り方と実時間との対応が不明確な書き方になっているように思う. たとえば," Here, in appending the sign < to the function B in the first term, we made use of the fact that as long as the integration variable τ is confined on the contour C1 it is less than (in the contour sense) t1′."と書かれているが,そういう意味では<は定義されていないのではないか?というかそもそも自己エネルギーのlesserとか定義してない.

逆に,Langreth則によって<, >, R, Aを導入するというふうに見ることもできる?

まとめノートの(4.34)あたりの文章の流れが元と少し変わってしまった.

5. Basic Quantum Kinetic Equations; 基礎量子運動学的方程式

5.1 Introductory Remarks 序論

基礎量子運動学的方程式の導出にはKadanoff-Baymの方法とKeldyshの方法がある. この二つは等価である. 5.2と5.3においてそれらについて議論する.

疑問:なぜgreater/lesser成分を計算するの? #issue

5.2 The Kadanoff–Baym Formulation; Kadanoff-Baym形式

G = (G^R + G^A) / 2 とかを導入したりしたけどこれはどういう意味だろう?

GKB方程式の大雑把な導出をまとめると, 1.lesser成分に対する右Dysonと左Dyson方程式の差分をとる. 2.R/Aについて対称と反対称に分離して整理する. 3.スペクトル関数と自己エネルギーの虚部を導入する. という手順になる.

5.3 Keldysh Formulation; Keldysh形式

lesserに対するDyson方程式を逐次代入して書き換えただけ. すごくサラッと書かれている. それだけLangreth則が強力ということなのだろうか.

ざっくり言うと「Kadanoff-Baym形式(=微分方程式)+ 境界条件 = Keldysh形式 (=微分積分方程式)」という関係. どちらを選ぶかは問題設定次第.

6 Boltzmann Limit; Boltzmann極限

GBK方程式 → Boltzmann方程式を辿る. Wigner表示をして,勾配展開して,準粒子近似をすると出てくることを見る.

半導体の物理では,Boltzmann方程式で解析することが少しも自明ではないことは注意しておくべき.

6.1 Gradient Expansion; 勾配展開

勾配展開のココロは,2点関数の座標系を「速い」変数と「遅い」変数に分けることにある.

でもなんで重心変数が遅い自由度,相対変数が速い自由度になるの? #issue

6.2 Quasiparticle Approximation; 準粒子近似

あまりにサラッと書かれていて驚く…

遅延自己エネルギーの虚部が微少量となると,スペクトル関数がdelta関数になることを準粒子近似と書いてある. スペクトルが十分にシャープだと粒子としての性質が見える.

6.3 Recovery of the Boltzmann Equation; Boltzmann方程式の復元

不純物による電子散乱の機構を考えたときのBoltzmann方程式を再現した. 記述が少ないせいで,計算が追えないかと思ったら,そんなことなかった.


以降,7章でゲージ不変な形で定式化をやり直して,8章でKadanoff-Baym仮設の議論をしてChapter IIが終わる. ここでひとまず打ち止めにして,他の本に移る.今までの部分の「イマイチわからない」感じが払拭されたらまた戻ってくることにする.