回路豆知識 - nearfactory/2024-TOINIOT2 GitHub Wiki
#001 プルアップ・プルダウン
プルアップ・プルダウンとは
簡潔にまとめると「抵抗を介して電源に接続すること」。別の場所からの入力がないとき、不定電位となって「浮く」ことがないよう、電位を固定する目的で使用される。 プルアップのことを「プラス電源に吊る」、プルダウンを「GNDに落とす」「GNDに落ちる」とも呼ぶ場合がある。
目的
電位をプラス電源またはマイナス電源(要するにGND)と同位にすることで「ロジック」を固定することが可能になる。 このロジックを固定することは、基本的なボタン入力やMOSFET/トランジスタ操作のほか、AND/NOT/OR回路などへの応用も利くため、非常に有用な構造である。
「ロジック」とは、TrueとFalse(真と偽)を0・1の信号として表現したもの。回路中では主にマイナス電源とプラス電源がそれぞれ0・1に対応している。
example
大体抵抗値は10KΩか100KΩを使用することが多い。 基本的にはどちらでも問題はない。が、「抵抗値の大小関係」には気を付けること。 より小さい抵抗値で接続されている方に電位は引っ張られる。(cf. 電源の分圧/分圧抵抗)
プッシュボタンの回路
TJ3Bcoreの入力ピンまわりの回路
#002 配線の太さと電流による発熱
「電気を流すと発熱する」とは
物理「ジュール熱」の考え方を思い出す必要がある。いくら電気を流しやすい金属とはいえ、基本的に(超電導状態でもなければ)すべての物質には電気抵抗が存在する。もちろん金属も例外ではない。そのような抵抗を持つものに対して電気を流すと当然熱が発生する。この熱のことをジュール熱と呼ぶ。
$Q=IVt=I^2Rt=\frac{V^2}{R}t$(Q:ジュール熱 I:電流 V:電圧 t:時間 R:抵抗) の関係式を理解しておこう。つまり、電圧または電流が大きくなると、発生する熱量も増加する、という比例関係を理解しておこう。
[参考] 銅の抵抗率: $2.2\times10^{-8}$(Ω・m)
電圧よりも電流に気を配ろう
基本的にRCJのロボット開発では電圧よりも電流に気を配るべきである。電圧は電池の電圧に基本的に依存し(キッカー用の昇圧回路などの例外はあれども)、電圧が大きく変化するような点は少ない。一方で、電流は使用するセンサやLED、モーターなどの特性・個数によってその値を大きく変化させる。 例えば、マイコン基板が必要とする電流の量と聞かれてすぐに答えられるかを考えてみてほしい。「電圧は?」と聞かれればすぐにMPUのInput電圧を答えれば済むが、電流となるとすぐには答えることができないことが多いだろう。このことが示す通り、電流というものは電圧よりも気を配られず、意識の外に置かれがちな概念である。 一方で、電流量の増大はそのまま発熱量の増大につながるというのは先項から理解いただけただろう。であるから、電流を意識した基板設計こそ、オーバーヒートしない基板の要であると言えるのだ。
example | MD基板
使用するモーターには様々な特性がある。例えばこのモーター。Pololuの一般的なモーターだが、無負荷電流は250mAなのに対してストール電流は5.0Aにも達する。また、データシートを読むことで、最高効率で動かしたときには0.84A、最も馬力が出る瞬間には2.5Aの消費電流となることもわかる。 このように、ロボットを動かすための根幹を担うモーターには、様々な電気的特性が存在し、特に電流についてはモーターを動かすうえで重要な情報であることを理解してもらいたい。 ここで私たちが考えなければならないのは「最悪の状況」である。つまり、ストール時のことだ。「通常ならせいぜい1.0Aぐらいしか流れないから配線幅は1mmでいいや」としてしまうと、ストール時にはその基板から発熱し、最悪の場合は発火するおそれもある。 つまり言いたいことは「ストール時にも耐えられるような基板設計にすべき」ということである。具体的にいえば「5.0Aの電流が流れても問題ない設計」が先述の例だとあたる。 また、今までの話はすべて1つのMD素子からモーターへの出力コネクタまでの話をしてきたが、これが電源基板からMD基板への電源供給線だとどうだろうか。最悪の状況というのが「すべてのモーターがストールしたとき」と考えたとき、許容するべき電流量が莫大なことに考え付くだろう。つまり、その電流量に耐えることのできる基板になっているか、と自問する必要があるということだ。
データシートにはさまざまな重要情報が記載されています。英語だから、長いからといって読むのをあきらめるのは、最悪の場合、修復不可能なレベルの結果をもたらす可能性につながります。丁寧に、少しずつでも読むことが大切です。
1mm-1.0Aの対応関係
基板設計において一般的に言われている対応関係に「1mmの配線幅には1.0Aまでの電流を流すことができる」というものがある。
「ベタ」を使おう
上記の俗説に従えば、5Aの電流を流すためには5mmの配線をしなければならない。しかし、基板上で5mmの配線をするとなると、かなりスペース的に厳しいものだろう。このようなときに有効なのが「ベタ」である。 「ベタ」をすることで、指定した範囲内で最大限の面積を使って大量の電流を流すことができるため、発熱の観点からもより安全性が高まる。 また、万一発熱した場合にも、表面面積が広くなるために放熱にも多少なりとも配線よりは有利である。
本当に「1mm-1A」の対応関係があるのかを確かめた動画があるので、時間があるときに確認しておいてほしい。 Youtube-プリント基板に大電流を流した結果... 1mm幅に1Aは本当か。
コネクタの選定に関して
今までは基板設計上での話をしてきたが、大電流が流れるのは基板に加え、もちろん「配線」にも流れる。それはつまり、流れる電流量に応じて使用するコネクタの種類を変化させる必要がある、ということに他ならない。
何Aまで流すことができるのか、何秒間までは耐えられるのか
XHコネクタを始め、様々なコネクタの種類がある現代。各コネクタにはそれぞれ異なる特性が存在する。それらをしっかりと確かめ、必要とされている要件に対して適合するコネクタを選定することが大切だ。
コネクタ例
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XT30/60/90 XT○○の部分が流すことのできる電流量を示している(単位:A)。サイズは大きいものの、安定感が他のコネクタよりも高い。一方で抜き差しがしにくいという欠点はある。 黄色のコネクタであるため、RCJサッカーで使用する際には色を隠さなければならないのがデメリット。
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VHコネクタ XHコネクタの製造会社と同じ会社が作っている。10Aまで継続して流すことができ、MD基板から各モーターへの配線などには使用可能であることが多い。 サイズが大きく、基板上でスペースが取られる一方、"ツメ"によってカッチリと固定されるため安定性は比較的高い。
配線にも気を配る
コネクタにも当然電気は流れるが、その先、つまり配線の選定も必要であることを忘れてはならない。「AWG規格」と呼ばれる配線の導体太さによって区分けされた規格を参考に選定することを推奨する。