kusakabesatsuki - dominickchen/cmrd GitHub Wiki
目次
- 5W1H
- 反省
5W1H
Who
企画・制作・執筆:草壁咲月(4年/1期生)
Where
企画・構想:ゼミの中で
執筆:家や学校
実験場所:東京メトロ有楽町線・副都心線 千川~小竹向原駅間
When
構想:2018年4月頃~
実験:2018年11月中
執筆:2018年11月~12月
What
「不便益の観点から、新しい地図のかたちについて模索する」をテーマに不便マップを作成。
新しい街を覚える楽しさや新しい発見を促す地図のかたちを目指した。
Why
「不便益」決定に至るまで
3年次の冬課題で、CHADの「土下座ポートレート」について調べ、「不便益」に興味を抱く。
⇒先生に川上氏の『不便から生まれるデザイン 工学に活かす常識を超えた発想』をお借りして、不便益に関するアイデアを構想
「地図」との関わり
4年次の夏休みの1カ月間を知らない町で過ごす。
⇒地図に触れる機会が多く、新しい街を覚えていく楽しみを改めて実感。
⇒「地図×不便益」のテーマに決定
How
1.地図と人々の関わり方を調査【リサーチ部分】
論文の前半は、今日の地図(Google map)に至るまでの遍歴と、社会や人々との関わり方の変化を調査。
そのなかで私たちが地図を通して社会や世界を認識してきた点や、現在のデジタル地図が一見世界を広げたように見えて、私たちの視界や興味の幅を狭めていることに着目。
2.不便益の観点から「不便益×地図」の先行研究を調査【リサーチ部分】
「不便益×地図」の先行研究は主に観光学の分野で進められており、不便益のデザイン法を用いた地図がいくつか開発されている。
どれも地図の内容を制限することで、利用者の注意を外に向け、偶然の発見を促す設計となっていた。
3.フベン地図(たべまっぷ)の制作【制作部分】
地図自体にプラスの印象を抱いていない20代(ゼンリン調査より)をターゲットに設定。
主に外食や観光時に地図を用いる20代に向けて、飲食店紹介サイト(たべまっぷ)を制作。
(http://infinityloops.xyz/kusakabe/main.html)
4.たべまっぷの実装【実験部分】
大学生10名に協力を頂き、フベン地図とデジタル地図の両者を使って見知らぬ町を歩き目的地を目指してもらった。そのときの心理的影響や効果を調べた。
結果は、フベン地図の効果として期待した「不便さ」やそれに伴う「達成感」、周囲環境との相互作用の増加や知らない町への興味・関心などを得ることができ、実験としては成功だったと言える。
反省
【工夫した点】
- たべまっぷに掲載することを前提に利用者が確実に目的地にたどり着くことを第一に考え、文字情報と地図情報の二つを併用して極度に情報量が少なすぎてたどり着けない恐れを防いだ。
- 文字情報は左折や右折などの基本的情報だけでなく、途中途中に「☆【○○○】」で目印となるような情報を加えた。この目印には、道を歩けば見えるであろう文字や記号のみを書き加え、それ自体が何であるか、どこにどのように表示されているかをなどの詳細はあえて書かないことで、被験者の興味心を引く工夫を施した。また目印を見つけながら歩くことで、道を間違えることを防止策としての役割も期待した。
- 地図情報はシンプルで単純なものを追求し、目的地までの大体の道のりを瞬時に図的に理解できるように心がけた。経路はすべて直線を用いて描き、経路の詳細な情報(道の形など)は省いて、交差点や曲がり角なども説明に必要な箇所のみ表示することで地図上の情報量を出来る限り減らした。また道の太さや距離等も正確ではない。
【できなかったこと】
1.地図上の情報量の調節
2.地図の”所有感”
【なぜできなかったのか】
1.検証実験の前段階として行った実験では、周囲への注意を最大限に向けるため、あえて文字情報だけを与えて被験者に目的地まで向かってもらっていたが、一度目印の情報を見落としたり間違ったりするとリカバリーできずに、目的地にたどり着けず迷う者が多く発生した。その後のアンケート調査でも、楽しさや達成感、新たな発見といった不便益の効用を得られない結果となった。そこで文字情報はそのまま、それを補足するような形で単純かつシンプルな地図情報を加えた現在の形にしたところ、被験者たちは皆、目的地まで到達することが出来た。だが今回は住宅街の中というお店や目印となる特徴が少ない地域で行ったため、周囲への注意喚起のために設置した目印が被験者の新たな発見の機会を奪っていたことも考えられる。考察でも述べたように何人かの人達は、目印だけでなく自らの着眼点で新たな発見を得ていたが、多くの被験者が目印を求めるために周囲を見渡しており、自発的な周囲環境への関心や興味を一定程度には引き出せたものの、十分とは呼べない。
2.先行研究の中に「かすれるナビ」というものがあり、これは利用者がその道を歩けば歩くほど、地図上でその道がかすれていき、次第に見えなくなるといったものであった。このナビは利用者によって表示のされ方も変わっていき、観光学で用いられた偶然の発見という不便益のほかにも、歩くことで自分だけの地図が完成していくという、"所有感"や”愛着”を得られるといった面があった。このような不便益の観点も今回のフベン地図に取り入れたかったが、飲食店紹介サイトという面でアイデアを構想しきれず、今回はとり入れずに終わってしまい非常に残念であった。今思えば、紹介サイトをお気に入りなどに登録することで、自分独自のフベン地図サイトなどを制作できるといったシステムをとり入れればよかった。
【今後の展望】
これまでを総括して反省点1・2に共通することであるが、たべまっぷの件数が少ないことが一番の問題として挙げられる。今回は時間や被験者の関係で1件のみの調査となったが、1の反省点にもあげているように、周囲環境が住宅街という限られた中での調査であったため、被験者の関心や興味を引き出すには不十分であった。もっと周囲に店舗や特徴ある建物が多くある街中でも調査したい。 しかし実証実験の結果、まだまだ改善の余地はあるものの、地図を通じて周囲から情報を獲得したり、新しい発見を見つけたり、被験者の周囲環境との相互作用の増加や主体性の向上などが確認でき、デジタル地図に比べ被験者の「知らない町と感じる」実感をより得ることが出来た。今回は飲食店紹介サイトという日常生活の中で地図を用いる機会の多い”外食”に注目して考案したシステムであったが、日常生活の中で時にフベン地図を利用できる機会を与えるという点では、”便利害”にあふれる現代において警鐘を鳴らす一翼を担うことが出来たと言える。 今後はより多くの人々に利用されるサイトを目指すことで、地図を単なる道具ではなく、地図自体を楽しめるものへと変えるきっかけを与えていきたい。