ayanakano - dominickchen/cmrd GitHub Wiki
目次
- 論文URL
- 5W1H
- 反省
論文URL
https://drive.google.com/file/d/13taGLkl1cpFIKAooh7ttxDjT_unJ1Ls8/view?usp=sharing
5W1H
Who
4年(1期):中野綾
Where
- 戸山キャンパス
- 自宅
When
- 2018年11月下旬〜12月上旬
What
- 日常の大切にしたい「記憶」(人といるときの空気感などの必ずしも目に見えない記憶)を覚えておくために「描く」ことが有効であるのか確かめる研究・実験
Why
- 私が大切にしたい「記憶」は、ビデオカメラ等には映らない。そこでどのような方法が適切であるかを考えた際に、目に見えないものを描こうとしたクロード・モネの作風に出会い、私の考える「記憶」を残すためには描くことが役立つのではないかと考えた。
How
1.記憶のプロセスの調査
- 扱う「記憶」の種類と、それが記憶される過程を明確にするため、 脳の中で記憶がどのように形成されるのか、脳科学的な視点から調査した。
- 調査結果より、この論文で主題に扱う「記憶」は長期記憶の中のエピソード記憶に分類されるものであることがわかった。
2.絵画と脳科学の関係の調査
- 絵画の歴史を振り返り、絵画を観たり描いたりする行為には脳の元来保持している作用が如実に現れていることがわかった。
- 調査結果より描くことは本能的な部分で私たちの「記憶」に良い影響を及ぼす可能性があると考えた。
3.先行研究の調査
- 描くことやイラストが記憶にもたらす影響に関する先行研究を調査した。
- 与えられた課題文や単語を記憶することには描くことが有効であることがわかった。
4.実験
- 9人の被験者を集め、一つの課題を与えた。そしてその課題にまつわるインタビューを行い、その様子を動画に残し、被験者に与えた課題とインタビュー動画と合わせて、一つの作品とした。 被験者には課題を与えてから一週間の期間から自由に2日選んで、選んだ日について、その日の忘れたくない瞬間を1日の終わりに私の作成した紙に書くよう指示した。 被験者の9人は4人のグループと5人のグループに分け、4人には2日分を文字で、もう一方のグループには2日分を絵で書かせた。その他の詳細な指示は以下に箇条書きでまとめた。
・書き始めから10分を計測し、10分を過ぎたら止めること ・カラーでもモノクロでも、自らの感情を筆に乗せられると判断した方法で行うこと ・1日を振り返り、できるだけ残しておきたい瞬間の感情や空気感を用紙の中に見える形で残すこと ・人に見せる用の作品ではなく、あくまでも自分用の日記やメモのような感覚で行うこと ・用紙全体でのまとまりや完成度は求めない ・忘れたくない瞬間は1日のうちいくつでも構わない
-
先行研究においては、はじめに記憶の課題となる文章や単語が用意されている。こうして用意される記憶は自身の経験とは元来関わりのないものであるが、私が扱ったのは、被験者自身にとっての忘れたくない、意味のある“記憶”である。
-
被験者が取り組んだ課題の一例
- 被験者へのインタビュー映像より
反省
【工夫した点】
- テーマ設定の際、まず考えたのが現実の概念を解明することだった。しかし、あまりにもテーマが広すぎたため、現実を認識した際に生まれる「記憶」やその曖昧さをテーマに置くことにした。
- 研究対象として扱いやすいかを度外視して、自らが今現在もっとも真剣に考えたい事柄として、その人自身の感情などの曖昧な部分を伴った「忘れたくない記憶」についてを取り上げた。感情や空気感などの曖昧で目に見えないものを含めて研究対象としたため、どれだけ論文の中で論理的にそれらを分析できるか、その方法の思索には苦労した。脳科学的な理論に近づけ、可能な範囲で結びつけることにより、この問題を解消した。
- 被験者それぞれが持つバラバラな忘れたくない記憶を対象にして生まれた結果には必ずしもわかりやすい相関は生まれなかったが、それぞれについて、一つ一つ丁寧に分析した。また、今回の結果に相関が見られなかった原因についても自分なりに分析した。
- 調査においては脳科学や美術との繋がりなど、様々な方面からできるだけ多角的に「記憶」を見つめることを意識した。今回の論文では必要な分だけ論理的に整理して論文に加えた。
- 実験においては、自分の扱う目に見えない「記憶」について、被験者にもその意図をよく理解してもらう為、テーマにしている「忘れたくない記憶」が感情やその場の空気感などを含んだパーソナルな記憶であることを説明した上で、それらを忘れないように実験の用紙に目に見える形で残すよう伝えた。また、それぞれの被験者に自身の記憶により気持ちを自由にして向き合ってもらうために、カラーでも白黒でも自分の感情を筆に乗せられると判断した方法で行うことや、被験者が本当に「忘れたくない記憶」をテーマにしてもらうために、実験日を一週間のうちから自由に選んでもらうことなど、できるだけ制約を最低限のものに済ませるよう考慮した。その上で、公平を期すため、課題に取り組む時間は全員10分に限定した。
- 扱う「記憶」が被験者の個々の記憶であり、その中でも目に見えない記憶であるという複雑な性質から、実験結果は個々へのインタビューを映像で記録し、まとめることとした。
【できなかったこと】
- 被験者を同一のラインに並べて比較することができなかった
【なぜできなかったのか】
- 扱う「記憶」が被験者それぞれ全く違うものであった。
- 言葉を使うことは誰もが日常的に行っているが、絵を描くことには慣れていない被験者もいた。そういった被験者にとっては絵を描く際に自分の心に向き合うことが難しかったようで、絵を描くことと文章を書くことを同じ基準で比べることが不可能だった。
【今後の展望】
- 絵画経験の揃った被験者を対象に、日常的な“記憶”と非日常的な“記憶”、自分以外の登場しない“記憶”と他人の関わる“記憶”に関して実験を行い、情動の影響を調査することにより、描くことがより有効な“記憶”はどのようなものなのかと合わせて詳しく調査していきたい。