Homesick Mirror - dominickchen/cmrd GitHub Wiki
制作者
金娜煐・塚本明日香
キャプション
アンチエイジングを謳うモノは、より長く今ある現状を維持しようとわたしたちを必死にさせる。エイジングを徐々に変化していく時の流れと捉えると、今をさらに保ち続けることに努めるのは「人工的に時を止めている」ようだ。だがわたしたちがインターネット上のフリーズに不快感を覚えるのは、現在進行形な時の流れに自身を置きたいと感じるからではないだろうか。 本作品では時が止まったように見せることで、絶えず進んでいる時への愛おしさを浮き彫りにする。思った通りに映るはずの鏡が、その機能を果たさなくなったら、あなたはリアル・ホームシックになるだろうか。
材料
- 鏡 A41枚
- ハーフミラー A41枚
- 山茶花の花びら
- LEDテープ/LED用リモコン
- 固定する台
- 両面テープ
- 発砲スチロール板
- 黒い色画用紙
制作過程
最初の案(金娜煐)〈映像+飾り〉
人間が「老いる」ことを恐れる理由は「死ぬ」という時期に近づいていくためだと思った。死後の世界が存在してその世界が楽しい・色彩強いところだと事前にわかったら年をとる(AGING)ことが怖くなくなる。メキシコの「Día de los muertos 」 or 「Día dos muertos」の祭りのイメージから考案。AGINGの最終点としての「死」。死に対する認識を変え、AGINGのない死後の世界を「祭り」の形で体験する。祭りの雰囲気が体験できる映像の制作すること。Día de los muertosで実際に使われる飾り(上記の写真のように)を作ってほかの制作物とバランスが取れるようにする。
ミーティングでの案〈映像から鏡へ変更〉
ミーティングでは、ゼミの発表の際に頂いたドミニク先生とゼミ生からの以下のフィードバックを基に、案を考え直した。
音
- 展示時は部屋を区切れないから、他を妨げないように工夫が必要、或いはなし
骸骨の解釈のちがい
- スペイン語圏での生と死の捉え方は円環的であり、日本の生と死は対極にある
- メキシコに絞らなくてもいいのでは (リメンバーミーそのものになってしまう)
- 弔いを楽しむ文化と日本とのミックス
- 死というテーマを慎重に扱うべき
死の恐怖
- リメンバーミーでは優しい身内が死後もいるという安心感があった
- 結局死後がどうなるかわからないから恐怖はあるのでは
日本の盆踊りとメキシコの死者祭のミックス、来場者にコマ撮りのアニメーションを体験させる、プロジェクションマッピングをする等、映像を制作する様々な案が出た。盆踊りについて本で調べたが、メキシコの死者祭とどう組み合わせたらよいかが思い浮かばなかった。展示で使用できる個室が暗くすることができないため、映像ではなく何かモノを作ることに変更した。 『鏡の国のアリス』から連想し、時が止まった状態を鏡で作りだすことにした。 普通の鏡と見る角度によって見え方が変わるハーフミラーを使用して、鏡を覗き込むと鏡の中がどこまでも永遠に続いているように見せた。日常からかけ離れた永遠を、時が止まった空間とし、そのような世界観を作った。
制作〈鏡本体〉
手前からプラスチック、LEDライト、市販のハンドミラーの順に取り付けたところ、プラスチックの透過性が高いためにあまり遠く(奥)まで続いているように見えなかった。そのため、ハーフミラーを購入した。
ハーフミラーとLEDテープを使用し、奥まで続いているように見ることができたことを確認した。LEDテープを仮止めした際の歪みが大きかったため、しっかり貼り付け、固定をした。
制作〈鏡の中身〉
約1週間前
遠くまで続いているように見せることができたので、次は鏡の中の時を止めさせるために鏡とハーフミラーの間に何かモノを入れられないかと考えていた。だが、いいアイデアが浮かばなかったため、openframeworksを使用して、鏡の画面に映るものをキャプチャできないかと試した。動いているはずのものがフリーズすることで、鏡の中の時を止めたかった。だがパソコンが重い上にプログラミング初心者であり、コードを書くことはできなかった。ファイル名変更や移動、操作方法を調べることにかなりの時間がかかった。
当日
前日のお昼までopenframeworksで粘ったができずに、どうやって時を止めようかと朝から必死に考えた。展示前日のトークイベントで「儚い」は社会的な時間から外れた時間であり、男女の恋愛のようにどこまでも続く時間といった意味合いがあるとメモに書いたことを思い出した。同時に、ここ数か月間、時が止まった瞬間はどんな時かという質問を知り合いに尋ね、素敵な異性を見てうっとりした瞬間という回答がいくつかあったことを思い出した。この2つから、鏡の中で恋愛のような美しさと儚さを表現することで、時が止まったような空間を作ろうと考えた。展示会場へ向かう途中にあった駐車場の隅っこに落ちていた山茶花の花びらを拾い、鏡の内側と外側に入れた。
来場者からのコメント
- 花びらの朽ち度に違いはあるのか
- 花びらを鏡の中は元気なもの、外は萎れたものにしたら面白いのではないか
- きれい・かわいい
感想
- プログラミングに躊躇せずに、最初から使ってみるべきだった。分からないときにどのような検索ワードを用いたらよいかという初歩的なところでつまずいた。プログラミングの方法というよりも、どんな仕組みで動いているかということを先に知ったほうがよいと実感した。
- 時を止めるのにどうしたらよいかを考えるのが予想以上に難しかった。
- 花びらを朽ちさせる、浮かせる等、もう少し工夫したかった。
- LEDライトのカラーの種類が豊富だったため、もっと活用したかった。
- 時を止めさせることだけでなく、死に対しての向き合い方や表現方法も探すべきだった。
- 体調管理が甘かった。