子供から大人にお下がりできる服 - dominickchen/cmrd GitHub Wiki
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私は背丈の殆ど変わらない母から服のお下がりをたくさん貰っている。服は上の世代から下の世代へ受け継がれ、時を経て着古される。これを服の最も一般的なAgingだと考えると、ある一着の服における着用主の流れを逆行させることは、服の新たなAgingの提案となり得る。
今制作においては子供用のワンピースから大人用のTシャツへ変形可能な服の実現を試みた。折り紙プリーツから着想を得て縫製に至っており、各サイズの印象に変化をもたらすことや変化の痕跡が残ることを意識している。プリーツの広がりがシワを想起させるか、あるいはその生地のうねりが若々しさを生じて見せるかもしれない。
who
- 須藤菜々美 ドミゼミB3
- 鈴木愛佳 ドミゼミB4
- 田中剛史 橋田研B4
プロローグ
「子供から大人にお下がりできる服」はドミニク先生の演習,メディア・アート論のキュレーションアイデアから派生したものである。
- ファッションの実用展
この時は、アートとしてのファッションと、いわゆる実用的と呼ばれるファッションのギャップの大きさを問題視していた。 その中で、網羅的なファッションの紹介と遺伝子組み換え的にリミックスしたファッションにおいて実用性の本質を再考しようという試みであった。 子供から大人にお下がりできる服の発案は子供服の実用性を問うリミックス作品とも言え、これにより中世に戻りつつある子供服の現状を危惧するという意図もあった。
ここから派生して、展示テーマ「Aging」にこのアイデアを組み込むために [子供服の実用]→[服の時間経過] に焦点をシフトした。
how
①9月某日 ミーティング1-2時間×2回
- コンセプトの強化、共通意識の形成
サイズが変わる服とは区別されたい
一回性、不可逆性
- どのような形で表出するか →子供サイズのワンピースから大人サイズのTシャツへ変形させる服
②10月 機構の設計・素材選び
- 10月中旬頃からは基本的に毎週月曜日に集まり製作を進めました
設計案メモ
・プリーツ 畳む
・切る+畳む
・縮む/伸びる系:ポップコーンTシャツ(立体的なウール生地)
・ひっくり返す
・大人用か子供用で部位を変えてもいいのでは
・素材
・靴など全身コーディネート
・赤ちゃんだから使うものを大人服に盛り込む
・一体
・シワ:シュミレーションとして映像があったらなお良い
・ストローイモムシのような原理
・ファスナー
・扇子のように伸び縮み
参考:折り紙プリーツを研究していらっしゃる三谷純先生 (webサイト)
折り方を真似して3種類程紙で作ってみた
→採用!さてどうやって組み込もう…
③11月 中間発表に向けてサンプル作り
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まず子供サイズのワンピースを製作
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110cmと120cmサイズの昔のワンピースを引っ張り出してきて型紙をとった
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袖丈は変化させなくていいよう、肩の落ちたデザインに(着丈も共通)
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橋田研M2の中山さんのマネキンを採寸
採寸結果
→これによりプリーツを差し込む必要があることがわかった箇所
*着幅:幾何学的な蛇腹折り *袖周り:扇子状の蛇腹(大) *首回り:扇子状の蛇腹(小)
袖周り〜首回りははじめ統一した機構で広げようと試みるが失敗
- ワンピースと機構(紙)を仮縫いし、プロトタイプの製作
子供サイズのワンピースの脇に紙で作った折り紙プリーツを仮縫い付けたもの
④中間発表で出てきた課題点
以下のfeedbackを参照
- 機構の素材
候補:不織布/ポリエステルの薄い布地/伸縮するジャージ素材
- 機構を操作する方法
候補:仮縫いして、糸を引き抜く/ZIP/スナップ留め/パーカーのフードの原理で巾着のように絞る
- 不可逆性の表現はどうするか
候補:機構だけいくつも作る/糸を引き抜く
- 展示方法
候補:マネキン2体にそれぞれのサイズで着せておく/マネキンをはしごする/ハンガーラックに掛ける/HOWTOはどうするか
⑤11月末 機構を布地で完成させる
折り目をつけるために、比較的固めで自立性のある布地を探す →不織布(厚固)(薄柔)、ポリエステル布地
制御が解かれた時に自動で開いてくれる強い素材が良い ◎不織布(厚固)に決定
- 不織布にカッターで軽く傷をつけ、折り目をつけた
機構(脇用)
機構(肩、首用)
- 子供らしい要素を大人サイズに受け継ぎたかったので、機構をカラフルなデザインに
ポスカで加工した不織布をひたすら塗ったもの
⑥12月 機構にコードを通して制御を試みる
コード ポリエステル・コットン2mm
コードストッパー Amazonにて購入
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電動のキリ(橋田研所有物)で穴をあける
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機構(肩、首用)はシンプルな直線で通した
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~~ 機構(脇用)は蛇状にくねくねとコードを通した ~~
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付け襟と背中の空き作成
⑦最終調整〜当日
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イベント21で子供用マネキン(3歳用100cm)をレンタル
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問題の発生
大人サイズがマネキンが太くて入らない
→ 応急処置として伸びる柔らかいジャージ素材を購入、綿と不織布の間に縫うことに
コードが細い方が滑りがよくスムーズに動かせるが、細すぎてストッパーで留められない
→ いっその事やりたかった「元には戻せない感」を出したい
◎お下がりの過程にハサミで[切る]動作の導入を
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フェルトで覆い被せるようにして脇に縫って(今回は繰り返し体験してもらうためにマジックテープ)機構を内側にしまい、フェルトを切ってもらう
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HOWTO説明ビジュアルの作成
feedback
中間発表時
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非可逆性を追求した方がいい
- 布を脇に貼ってカットする
- 布の内側に紐を隠してカットする
- 脆い素材を使用する
- ZIPで隠す
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イニシエーションにしても面白い
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展示方法について
- マネキン2体あった方がいい
- 実際にマネキンをはしごして脱ぎ着せさせたい
- 機構のみいくつも作って実際に触ってもらう
- 実際に着ている様子が見れるカタログや画像映像があるといい
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色について
- おさがりで着古したような温かいイメージを出す
- レトロなワンピース風、お母さんの手作り風
展示当日
- 子供服の選び方が変わりそう
- 子供服は親が選ぶ、親目線で考えても楽しい
- お下がりをもらう方も嬉しい
- 服にハサミを入れるという体験が緊張した
- 毎回体験して頂くために準備を要したが、不可逆性が伝わりやすいモデリングだった
- 子供が大きくなってその子が着ればいいのではないか?(お上がり服の不徹底の指摘?→サイズは段階を踏んで調節できるものではなく一気に子供から大人サイズになる。子供が再び着るとしてもブランクが発生するため子供サイズのワンピースとして着終わった後は上の世代に渡すのが妥当である。)
- しかしそう思うひとがいるのは事実
- agingとお下がり服がどう結びつくのかよく聞かれた
- 服そのものが朽ちていくagingではなく、服と人の関係性においての時間経過(aging)の再考、提案
- 歌舞伎の衣装の[引き抜き]を思い出した