わかいことばのし - dominickchen/cmrd GitHub Wiki
作品
コンセプト
言葉が老いていく/変化していくさまを映像で表現する。
着想
形のあるものを展示するよりも、言葉を展示したいと思った。
制作者
- 高橋二稀(ドミニクゼミ・学部三年)
- 田中陽(橋田研・修士二年)
制作
制作期間
2018年11月~12月
制作過程
1.詩の再構築
(0)映像制作の元になる詩を用意する。
①詩をこちらで用意してそれを様々な年代の人に書き直してもらうという形で制作をスタート。実際に中原中也など複数集めてやってもらうが、「古い言葉がわからない」ということで難しいと判断。
②先生に相談し、用意する詩を変更する。童謡などを作っている北原白秋、もう少し現代に近い寺山修司など。しかし前回と同様に、「難しい」と言われる。わからない言葉は検索してやってもらうも、みんな同じような回答になってしまう...。
③日常で使っている言葉は明らかに違うのに、書き言葉にしようとすると似てきてしまう。言葉だけを集めてそれをこちらで詩にはめ込むのがいいのでは?↓
④年代別に言葉を集めて、詩に当てはめる という形に変更。
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(1)年代別に言葉を集める
書き言葉だと違いが出ないので、話し言葉から集める。→性別や年齢のわかるラジオ番組やTED、周りにいる人の会話などから文字起こしをする。ラジオ番組は文字起こしサイトやタイムフリーなどもあって便利。一人に絞って偏りが出ないようにいろいろなところから集めた。20代、40代、70代を各3人以上づつ集める。 参考→http://miyakeb1.omelet.jp (一部書き改められてアップされていたので聴きながら完成版を作った)http://www6.airnet.ne.jp/kosaka/kinki/radio/ongakuhon/sfs6_diary/sfs6_diary/index.html
(2)詩を用意する
青空文庫から著作権切れの作品を探す。できるだけAgingに関係のありそうなものをピックアップ。その中から室生犀星の「老いたるえびのうた」を選ぶ。ただ、青空文庫だけだと、昔の言葉から最近の言葉へという一方向しかない。最近の詩も用意したいな...と考える。この時点で合同講評会で橋田先生から、既存のものだけではなく自分でも詩を作ってみたらいいかもね?というお言葉を得ていたので一念発起して自分でもAgingに関連した詩を書く。
(3)詩に言葉を当てはめる
用意した二つの詩と、集めた単語集を照らし合わせて該当の語句を当てはめていく。
映像のレイヤーづくりの時のために変化する段階によって単語を色分けした
2.映像の制作
アフターエフェクトを使用
(1)詩を変化させる
①原文、70代、40代、20代の4つの詩を30秒づつ載せる
②原文から70代で変化する単語をピックアップ。
③変化する単語を抜いた原文を用意。抜いた単語の部分は空白にし、単語がある場合と同じ字間になるように調整する。
④原文と抜いたver.を重ねる。
⑤抜いたver.を頭からフェードアウト(5秒)させる。これで変化する部分だけフェードアウトして消えたように見える。
⑥変化する単語だけを用意する。変化しない部分は空白にし、抜いたver.の空いているところに変化する単語が来るように字間を調整する。
⑦変化する単語を頭からフェードイン(5秒)させる。
⑧フェードインとフェードアウトのタイミングをずらすと、単語が消えた後に新しい単語が現れる。
⑨ ①〜⑧をそれぞれ単語が変わるごとに繰り返す。
レイヤーはわかりやすいように世代が変化するごとに色分けした
(2)橋田研合同講評会でのFB
- どこが変わった部分かわかりにくい
- 変化が早い
- 世代によってフォントを変えると良い
- 背景にも工夫が欲しい?
- 解説も映像に盛り込む
↓
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20代は源EiゴシックP、40代はヒラギノ明朝、70代はクレー にフォントを変更
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映像の時間を20秒のばし、フェード時間もそれぞれ20秒にした
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変化した言葉を消すのではなく、下に落とす仕様にする。フェードアウトするレイヤーとは別に一単語づつのレイヤーも用意し、それに落ちるようなモーションをつける。
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解説のインサートも作ったがどうやってみてもダサかったのでやめる。できるだけスタイリッシュな方が展示した時に映えると思った。
ボツインサートのキャプチャ
(3)最終調整
- 文字の落ち方も世代ごとに変えたい
- 背景に水の流れ=雨を降らせたらどうか
↓
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20代は跳ねるように、40代は転がるように、70代は軽く、原文は重く見えるように軌道をつけ時間を調整した。
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前日の夜中まで雨については悩んでいたが、メインの詩が読みにくいので取りやめることにした。
雨は四角いシェイプを動かすことで降らせてみたり、雨のエフェクトをかけてもみたけどやっぱりしっくりこなかった
3.当日の展示準備
(1)映像
リピート再生するために橋田研の等力さんにRaspberry Piをお借りする
(2)冊子の展示
前日の夜中に思いつき、急遽用意。映像では一つの詩として展示しているが、もちろん一言違えば全く異なるニュアンスを持つ別の詩になり得るのでそれも展示したいと思い作成。映像ではエフェクトのタイミングの関係で、一文字づつの変化にはならない。調整して、一コマづつキャプチャを取る。冊子自体はホチキス留めにテープの背表紙。二編とも大小用意して計四冊制作して展示をする。
4.フィードバック
- 言葉の変化の仕方が面白い。
- 若者言葉がくだけていてギャップで笑ってしまう
- 冊子の装丁が良い
- レーモン・クノーがアートを作ったらこうなるかもしれない
5.振り返り
- 冊子を用意したことでゆっくり手にとって見てもらえたのがよかった。
- 笑ってくれる方が多くて嬉しかった。
- できるだけ解説をしたくなかったが、解説をしないとあまり観てくれない方もいて残念だった。キャプションにもう少し色々盛り込むべきだったかも。
- プログラミング等を使ったらもっと映像面で楽をできたかもしれないがそのあたりは不明...。
- 結局詩の再構築は自分でやることになってしまったので、自分としては手が加わった感があってノンフィクションじゃない気がしてしまう。
- リピート再生も元々はPCアプリでやろうとしていたが、直前まで何も準備していなかった。ラズパイをお借りできたのはラッキーなだけなので、作品の完成ではなく展示まで考える必要性。