窓に倚つて輝き初めた星の光 - asamesi/mae GitHub Wiki
窓に倚つて輝き初めた星の光をボンヤリ見詰めてゐた美奈子は、低い声で聞えるか聞えないかのやうに答へた。青年は、自分一人で出て行きたいらしかつたが、美奈子を一人ぼつちにして置くことが、気が咎めるらしかつた。彼は、到頭云ひ憎くさうに云つた。 「美奈子さん。如何です、一緒に散歩をなさいませんか。お母様をお待ちしてゐても、なかなかお帰りになりさうぢやありませんから。」 青年は、口籠りながらさう云つた。 「えゝつ!」 美奈子は彼女自身の耳を疑つてゐるかのやうに、つぶらなる目を刮つた。
三
美奈子に取つては、青年から散歩に誘はれたことが、可なり大きな駭きであつた。四五日一緒に生活して来たと云ふものの、二人向ひ合つては、短い会話一つ交したことがなかつた。 その相手から、突然散歩に誘はれたのであるから、彼女が駭きの目を刮つたまゝ、わく/\する胸を抑へたまゝ、何とも返事が出来なかつたのも、無理ではなかつた。 青年は、美奈子の返事が遅いのを、彼女が内心当惑してゐる為だと思つたのであらう。彼は、自分の突然な申出の無躾さを恥ぢるやうに云つた。 「いらつしやいませんですか。ぢや、僕一人行つて来ますから。僕は、日の暮方には、どうも室の中にぢつとしてゐられないのです。」保険安い安い