狂言詞 - asamesi/mae GitHub Wiki

(白蔵主の詞)けふは、思ふ子細あつて、案内を乞うてすは  「釣狐」以下、三百番本による。 (群衆の詞)皆言ひ合せて、まかり出でてすは  「薬水」 これを直訳すれば、恰も、現代語の「……したことですは」と言ふことになる。併し、「す」は「です」ではない。「……乞ひて候よ」「……罷り出でて候よ」が、正しい逐字訳見たやうな形である。「て」は、現在完了助動詞の連用形につくて、其についで対話敬語としての「す」が這入つて居り、更に接尾感動語として「は(わ)」が添はつてゐる。而もこの「す」は、明らかに、候が語原である。 にも繋らず、更に一段の古語から出て、中世末まで残つたものゝ様な感じを、人に与へる。 あす・ですなどのすとは根柢に違ひがあるのだが、之をおなじだと説いても、誤りとは言はれない。此が語原論の実態なのである。 今も言つた様に、「てす」の意義ははつきりしてゐるのだが、かうした例を集めて見ても、「てす」「です」が愈似てさへ来る。併し雑多な感受が混淆して来る、さう言ふ考へも導かれるので、大体において、「てす」と「です」とは、同時代に並行して流行した語で、妙に丁寧な感覚を持つてゐ乍ら、無頼人の間に使ひ馴れのした語であつた。発語者は、まづおのれの身分を高く人に感じさせ、その相手までも対等以上に取り扱ふやうな待遇感を持たせてゐて、而も軽視する心持ちさへ含めることが出来る。特別な場合の外は、多く一人称の叙述語である。医療 税務 這えば立て立てば歩めの親心