文吾は笑ふよりも - asamesi/mae GitHub Wiki

 文吾は笑ふよりも考へたかつた。「強いといふことは、善いといふこと、正しいといふことより一枚上手ぢや。」と言つた和尚さんの言葉を、しみ/″\と噛みしめて味ひたかつた。さうして、「強うなれ、強うなれ。」と、口の裡で叫んだ。  けれども、よく考へてみると、一人だけでは幾分強くなつたとて、大勢でかゝつて來られては、兎ても敵はない、これは何んでも手下をドツサリ拵へなければならない、其の手下の出來るまでは、近頃覺えた忍び足の法でやつてやらう、他人に出來ないことを自分がするといふのも、矢張り一つの強さだ、強いといふことが、善いといふこと、正しいといふことより一枚上手なら、もう大威張りぢや、自分はこの忍び足といふ強さで、※賣屋の婆に勝つた、家の阿母さんにも勝つた、これから一つこの和尚さんに勝つて、どうしてもあのおいしさうな駿河屋の羊羮を喰べねばならぬと、文吾は小ひさな胸に、自ら問ひ、自ら答へて、深く決心した。  其の夜の丑三つに、大膽な文吾は、東の山へ現はるゝといふ大きな星と弘法大師のお姿とを拜むのぢやと、母に告げて、壞れかけてガタ/\してゐる雨戸の外へ出たが、其のまゝ跣足に夜露を踏んで、飛ぶが如く光明寺へ駈け付けると、うま/\和尚さんの居間に忍び入つた。

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