仏壇の前に額づき - asamesi/mae GitHub Wiki

結城少佐、仏壇の前に額づき、静かに起ち上つて、退場。

北野  われわれも解散しようぢやないか。 柏原  生徒は待たせてありますから……。

北野、柏原に続いて、一同、次ぎ次ぎに座を起つ。 女たちの、「さよなら」「またなんかご用があつたら、いつでも」などいふ声。 最後に、云ひ合せたやうに、大坪老人と参弐とだけが残る。 きぬは大坪老人の傍らに、ふくは、座敷の座蒲団、茶碗など片づけてゐる。

参弐  (決意の色を浮べ)お父ッつあん……。 大坪老人  (その語気ですべてを察したやうに)うん、よし、よし、わかつた。 参弐  (ちよつと含羞んで)お父ッつあん、違ふよ……。 大坪老人  なにが違ふ? わかつたと云つてるぢやないか。お前は云ひにくからうから、わしが云つてやる。 参弐  (ますます照れて)今は駄目だよ。 大坪老人  駄目だかどうだか、当つてみにやわからん。のう、おつ母さん……。 きぬ  (はッとして顔をあげる) 大坪老人  うちの伜だがね、まあ、あんな風な男さ、ひとつ、思ひきつて、あんたのとこのを嫁にくださらんか?

ふく、これを聞いて、座敷の隅に蹲り、急に袖で顔をかくす。 第二新卒転職サイト おすすめ