定式化 - YuriOku/1D_SPH GitHub Wiki
SPH法で時間発展方程式を定式化するにはいくつかの方法があります。 1D_SPHには以下の2通りの方程式系が実装されています。 これらの方法はRosswog (2009)で詳しく導出、解説されています。興味のある方はそちらも参照ください。
Vanilla ice
SPH粒子の時間発展方程式を求める標準的な方法は、Lagrange形式で表現された流体方程式系をカーネル近似によって離散化する方法です。 SPH法ではSPH粒子の運動が流体の流れを表現するため、質量保存則が自動的に満たされ、連続の式は不要です。 運動方程式とエネルギー式は
です。ここで、 は速度、 は圧力、 は密度、 は単位質量当たり内部エネルギーです。 空間微分をカーネル近似を用いて計算します。 カーネル近似の下では、物理量 は
と表されます。ここで は粒子の広がりを表すカーネル関数です。 式(1)を各SPH粒子の体積要素 を用いて離散化すると
となります。 体積要素はSPH粒子が持つ物理量 とそれに対応する連続量 から と求められ、標準的には が使われます。詳しくは体積要素のページをご覧ください。 の空間微分は
と表されます。 の計算については、カーネル補間法をご覧ください。 運動方程式の右辺に式(3)を適用する前に、式が i, j の交換に対して反対称となるように、
の関係 (Monaghan 1992)を使います。ここで は定数です。 伝統的には の微分から自然に得られるの場合の形が使われていますが、 1D_SPH では を採用しています。 とすると、異なる質量のSPH粒子があるときに発生するノイズを抑えることができます (Ritchie & Thomas 2001)。 とする形式 はGASOLINE2 (Wadsley et al. 2017)、MAGMA2 (Rosswog 2020) で採用されています。 このときSPH方程式系は
となります。 ここで、 です。
Lagrangian
SPH方程式を導出するもう一つの方法はLagrangianから出発して変分原理を用いる方法です。 SPH粒子系のLagrangianは
です。これをEuler-Lagrange方程式
に代入します。 式(5)の第一項は運動方程式の左辺になります。 第二項にLagrangianを代入すると
となります。ここで等エントロピー流での熱力学第一法則
を使うとEuler-Lagrange方程式は
となります。 SPH方程式系を密度から定式化する場合 (の場合)、式(8)に
を代入します。すると、式(8)の密度の微分は
となります。ここで、
はスムージング長の変化を考慮に入れるための項で "grad-h-term"と呼ばれます。 添え字に注意して変形すると、運動方程式
が得られます。 エネルギーの時間微分は、熱力学第一法則から
となります。
一般の体積要素の場合では、Euler-Lagrange 方程式(8)に
を代入して、
が得られます。
参考文献
- Monaghan, J. J., “Smoothed particle hydrodynamics.”, Annual Review of Astronomy and Astrophysics, vol. 30, pp. 543–574, 1992. doi:10.1146/annurev.aa.30.090192.002551.
- Ritchie, B. W. and Thomas, P. A., “Multiphase smoothed-particle hydrodynamics”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, vol. 323, no. 3, pp. 743–756, 2001. doi:10.1046/j.1365-8711.2001.04268.x.
- Rosswog, S., ``Astrophysical smooth particle hydrodynamics'', New Astronomy Reviews, vol. 53, no. 4–6, pp. 78–104, 2009. doi:10.1016/j.newar.2009.08.007.
- Rosswog, S., “The Lagrangian hydrodynamics code MAGMA2”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, vol. 498, no. 3, pp. 4230–4255, 2020. doi:10.1093/mnras/staa2591.
- Wadsley, J. W., Keller, B. W., and Quinn, T. R., “Gasoline2: a modern smoothed particle hydrodynamics code”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, vol. 471, no. 2, pp. 2357–2369, 2017. doi:10.1093/mnras/stx1643.