オープン化のマニュアル - YCAMInterlab/GRPContractForm GitHub Wiki
#オープン化のマニュアル ver.1.0
このガイドラインは,様々なプロジェクトで,オープン化をスムースに・効果的に進めるためのツールです.
山口情報芸術センター[YCAM]でのオープン化の試み,GRP Contract Form(Ver.2 12条5項)と関連して開発されました.
以前は、"オープン化のガイドライン"として公開していたものですが、ガイドラインの大幅アップデートに伴い、プロセスベースのマニュアルとして位置づけられることになりました。
##1.ガイドラインの構成
まず,事前にオープン化の実施のチェックリストを検討し,この要件を満たすようなら,オープン化の基本ガイドラインを参照しつつ制作及びオープン化を実施する.
適用ライセンスのガイドラインと公開ウェブサイト構成のガイドラインは,それぞれ適用ライセンスの設定と公開ウェブサイトの構築についてより具体的に示したものである.
適用ライセンスのガイドラインは,実施主体もしくはプロジェクトごとに,経営方針・プロジェクトの目的にあわせて実施主体が作成する.
####オープン化の原則
効果的にオープン化を行う為の原則を,オープン化がそのプロジェクトでもたらすべき,もしくは実現すべき項目として示している.
#####1.クリエイティビティを向上すること (モチベーション向上,つくる人の,参加する人の,使う人の)
#####2.プロジェクトの方針にかなうこと (実施主体の経営方針,プロジェクトの目的)
#####3.多くのユーザが利用できること (導入の容易さ,わかりやすさ,自由度の高いライセンス)
#####4.継続して発展できること (コミュニティ,低ラニングコスト)
#####5.成果の汎用性が高いこと (自主的な拡張)
##2.オープン化実施のチェックリスト
[原則:オープン化がクリエイティビティの向上に寄与する]
検討対象 | 指針 |
---|---|
実施主体の経営方針 | オープン化がもたらす効果が経営方針にかなう |
プロジェクトの目的 | オープン化がもたらす効果がプロジェクトの目的にかなう |
プロジェクトの成果 | オープン化によってクリエイティビティ向上が期待される |
(誰のクリエイティビティの向上に寄与するか、常に意識すること)
レイヤー | 該当する人 |
---|---|
つくる人 | コラボレーターや主催者 |
参加する人 | ワークショップ参加者、地域に着目したアートプロジェクトに巻き込まれる地域住民 |
使う人 | ユーザ、二次利用者 |
オープン化を実施するか判断する為のチェックリストである.チェック項目それぞれに通底する判断基準は,オープンな運用がクリエイティビティの向上に寄与するかである.この判断の際,ステークホルダ,つまり,「つくる人」・「参加する人」・「使う人」それぞれのクリエイティビティの向上に寄与するか(たとえばモチベーションを向上するか)を検討し,そのバランスに注意すべきである.
##3.オープン化の基本ガイドライン
####3.1 オープン化の基本ガイドライン (ソフトウェア・ハードウェア)
要素 | 指針 | |
---|---|---|
プリプロダクション | 成果の性質 | 原則:汎用性が高いプラットフォーム的な性質を持たせる 機能が特化した成果:可用性が高いこと |
利用環境 | 多くのユーザが利用できるようにする (例:普及したプラットフォームに対応 、マルチプラットフォームに対応) | |
拡張機能 | 可能であれば拡張機能を持たせる (拡張機能:ユーザが開発した成果を拡張機能としてシステムに取り込む機能) | |
ポストプロダクション | 適用ライセンス | 自由に派生物を作成し利用できるライセンスを用いる (詳細はライセンスのガイドラインを参照) |
公開ウェブサイト | ユーザビリティを高める 構築•運用コストを下げる | |
ドキュメント | チュートリアル•サンプル•事例紹介を含むドキュメントを公開する | |
コミュニティ | フォーラム•メーリングリストなどを用いてコミュニティを運営する | |
ニュース | 更新情報を掲載する |
注:適合しないものでも高いクリエイティビティを実現できるものはオープン化を検討する
プロジェクトの成果における各要素を指針に合うよう調整する.
######(成果の性質・利用環境) 成果を利用できる機会をより多くすることがポイントである.原則的には汎用性の高いプラットフォームの性質を持たせるべきである.何らかの機能に特化したものであれば,より広く利用できるようにすること,例えば,普及しているプラットフォームで利用できるようにすることを検討すべきである (e.g.Arduinoのshield,openFrameworksのaddon).
######(拡張機能) 高い汎用性があるものであれば,ユーザがオリジナルの機能を容易に追加できる機能を持たせるべきである(e.g.shield,addon).
######(ライセンス)
利用範囲の制限を少なくし,利用機会を増やす為,原則的に,より自由に派生物を作成できるライセンスを採用することが望ましい.
ライセンスは多様であり,プロジェクトの運営目的,利用許諾する権利の範囲,成果の種類,スポンサーやコラボレータとの権利関係などを鑑みつつ決定する必要がある.
経営方針およびプロジェクトの目的に従って,最も適したライセンスを選択,もしくはライセンスを制作すべきである.よって実施主体が自らのライセンスガイドラインを準備することが望ましい.
ソフトウェアライセンスについて,GPLが適用されたコードは,二次利用しオブジェクトコードを配布した場合にソースコードの公開義務があり(GPL v3 第6条),商用に用いづらく,利用範囲を狭めることにつながる.調査の中で,利用したコードにGPLが含まれた為,GPLを選ばざるを得なかったというコメントもあった.よって,明確な意図がない場合は可能な限り,こうしたライセンスは避けるべきである.よって,公開義務がないより自由度の高いライセンス(MITライセンス,BSDライセンスや,特許関連条項を含むApacheLicense2.0など)を採用することが望ましい.
######(公開ウェブサイト) ユーザビリティを高めることに加え、コスト(労力・費用)を押さえることが重要である.容易にウェブサイトを構築できる,コミュニティ機能を有している,メンテナンスコストが小さいことから,プロジェクトに適した既存のウェブサービス(e.g.Github, Thingiverse)を用いるのも良いだろう.プロジェクトの実施主体が既にウェブサイトを持っているなら,ページを追加することで対応するのも良い.構成については公開ウェブサイト構成のガイドラインを参照のこと.
######(ドキュメント) 映像・文書などによるものが一般的である.ユーザの初期導入にもたらす効果が大きく,非常に重要な要素である.ドキュメントの制作には一定の時間・労力といったコストが必要であるが,完成度の高いものを準備すべきである.
######(コミュニティ) コミュニティはオープン化プロジェクトの持続的発展の核となる要素である.コミュニティの構築,維持は長期にわたる作業であるため,短期的なプロジェクトのタスクに含めることは難しいかもしれなが,立ち上げの段階であきらめることは得策ではない.何らかのユーザとのコミュニケーションの場(BBSなど)だけでも準備しておくべきだろう.
######(運用) これらの指針にもとづいた仕様を企画段階で設定し,複数の参加者が居る場合は,トラブルを避けるため企画書や契約書(e.g. GRP Contract Form)などでコンセンサスをとるべきである.プリプロダクションに含まれるものはもちろん,ポストプロダクションに分類したものについても,必要なタスクを含んだ制作計画をプロジェクト全体のプロセスに盛り込み,企画書に明示する等すべきである. 多くのユーザに受け入れられ持続的発展が見込めるか不明な場合,所属組織の支援や投入できる資源(時間や労力)が限られる場合など,当初は全ての指針を満たすことはできなくとも,プロジェクトの発展に応じて段階的に対応して行くという戦略も採り得る.こういった場合でも,少なくとも公開ウェブサイトの構成ガイドラインで示した要素を取り入れ公開すべきで,これにより最低限のオープン化の有効性,持続的発展の可能性を担保することができる.
####3.2 オープン化の基本ガイドライン (コンテント)
要素 | 指針 | |
---|---|---|
プリプロダクション | 成果の性質 | アーカイブの場合:一定の法則に従って掲載されている(時系列など)、コンテンツに共通する一定のフォーマットを有する |
利用環境 | 普及したブラウザで閲覧可能である 多言語に対応している | |
ポストプロダクション | 適用ライセンス | 自由に派生物を作成し利用できる ライセンスを用いること |
公開ウェブサイト | ユーザビリティを高める 構築•運用コストを下げる | |
ドキュメント | 概要、マニュアルを公開する | |
コミュニティ | 継続して開発するものの場合:フォーラム•メーリングリストなどを用いてコミュニティを運営する | |
ニュース | 更新情報を掲載する |
注:適合しないものでも高いクリエイティビティを実現できるものはオープン化を検討する
各指針の方向性は,ソフトウェア・ハードウェアのガイドラインと変わらない.成果の性質については,より利用機会をふやす為,利便性を高めることに着目し,指針を設定した.運用についても同様である. ####4.公開ウェブサイト構成のガイドライン (ソフトウェア・ハードウェア) 公開ウェブサイトに以下の項目を設ける
メニュー項目 | 含む要素 |
---|---|
about | プロジェクト自体のアウトライン,利用環境・プラットフォーム,ライセンス,免責事項 |
projects | 事例紹介 |
tutorials | チュートリアル |
download/code | 成果の公開 |
forum | コミュニティの構築•維持 |
news | ニュース |
公開ウェブサイトに以下の項目を設ける.各項目名は,内容が一見して理解できるなら,異なる語を用いても支障はない.
主に,成果がソフトウェア・ハードウェアの場合を想定している.コンテントの場合,プロジェクトの内容によっては,tutorialsやforumは省略できる.利用環境は,ユーザが成果を利用する為に必要な環境(対応OSなど)を意味する. ウェブサイト公開後は,各種メディアを通じた周知を行うべきである. Fogel Karl氏は,"あるプロジェクトの存在を知った人が最初に目にするのは, そのプロジェクトのウェブサイトの見た目"であり,"見栄えは重要である"とし,具体的には"リンク先に何があるのかが,リンクをクリックしなくても大まかにわかるようにしておく"べきとしている.公開ウェブサイトの構成ガイドラインに示す要素を含み,メニューに運用にこれらの要素が揃っていることを一瞥できるよう構成することで, そのプロジェクトがオープン化したプロジェクトであること(いわばオープンプロジェクト感)を示す効果を期待できる.
####5.ライセンスのガイドライン(YCAM用)
対象 | ライセンス | 採用理由 |
---|---|---|
Software | Apache License 2.0(Guest Research Project vol.2より) | 自由度,特許関連条項 |
Hardware | CC BY-SA(図面等)(OSHW Definition準拠) (Reactor for Awareness in Motion (RAM)より) | 自由度,マネタイズ可能 |
Document | CC BY-SA(EyeWriter2.0のつくりかたより) | 自由度,マネタイズ可能 |
特に理由がなければこのライセンスを使用する.
##ライセンスとクレジット
オープン化のガイドライン
企画制作: Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]
立案・作成: YCAM InterLab
オープ化のガイドラインはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンスで提供されています。
##免責事項
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