Open Campus 2022 - HondaLab/Robot-Intelligence GitHub Wiki
人工知能 vs 人間知能 (走行ロボット)
勝てるデータをつくる
Honda Labで研究している自律走行ロボット SSR3 をつかって,人工知能の代表例である ニューラルネットワークによるデータ収集・機械学習・自律走行をデモンストレーションします.
ニューラルネットワークとは,いわば人間の脳の神経回路を真似して数理モデル化し,コンピュータに 実装したものです. 人間の脳が学習して知能を獲得していくように,ニューラルネットワークも学習によって賢くなっていきます. その教師データは人間の知能を使ってつくってやる必要があります. つまり,ここで言う人工知能ももともとは人間の知能から学んだものです. ですから,人工知能が人間知能を超えることは不可能のようにおもえますが,コンピュータの計算処理能力 は,人間のそれよりも何万倍,いやそれ以上に高速で,なおかつ計算ミスも犯しません. 人工知能のアルゴリズムと,教師データが適切なものであれば,コンピュータの方が有利にも思えます.
しかし,「適切なアルゴリズムと適切な教師データ」をつくるのが難しいのです.
人間による操作をリアルタイムにデータ化する
走行ロボットをパソコンのマウスをつかって人間が操縦します. これ自体は,人間の知能を使っています. この操作データとロボットのカメラ画像データをリアルタイムに同時記録し,人工知能の学習のための 教師データとします.
計算サーバで学習する
人間の知能は,人間の身体の一部として備わっています.すなわち,脳や神経系です. しかし,ロボットの知能はロボットの身体自体に備わっている必要がありません. なぜなら,ロボットは人間と異なり他のコンピュータと高速にデータ通信することが可能だからです.
教師データはすべてロボットとは別の計算サーバに記憶され,そこで機械学習も行います.
ロボットの自律走行に高性能なコンピュータは必要ない?
大量の計算処理は,ロボットとは別の計算サーバで行います. 走行ロボット自身には小さなコンピュータ(ラズパイ)しか備わっていません.
計算結果のみをロボットが受け取ってその行動に反映させます. つまりロボットは高度な計算処理装置を自分自身が持ち歩く必要はなく,電波が届く範囲に計算サーバが あれば事足ります.
この点も,生身の人間よりもロボットのほうが有利に思えます.
当日の様子(動画)
互角の戦い
人工知能 vs 人間知能 の戦績はどうだったでしょうか?
その場で参加者が作った教師データではなく、あらかじめ慎重に準備した教師データで学習した走行ロボット(人工知能)と、 参加者高校生による操縦(人間知能)でコース2周のレースを行いました。
戦績はほぼ互角でした。
2021年のオープンキャンパスでもコースは違いますが、同じアルゴリズムを用いてレースを行いましたが、 人工知能の全敗で、その場で少し操縦を練習した高校生にまったく歯が立ちませんでした。 ほぼ互角であったということは、大きな進化です。
2021年からの進化
人工知能としてニューラルネットと1次元画像を用いるというアルゴリズムは2022年も同じでした。
異なっていたのは、教師データの作り方と、処理の速度でした。
2021年には、キーボード操作の瞬間の画像とモーター値を教師データとしました。 いっぽう、2022年には、マウス操作により操縦をおこない、マウスが動いた瞬間をもちいました。 そのことによっt,教師データの作成が容易となり、データの数および質ともに2021年よりも向上したのが一因と考えます。
もう一つは、処理速度です。 2021年には 6Hz程度でした。 一方2022年は、30HzでNNの出力が行えました。 計算サーバをリアルタイムで利用するシステムを構築したことによる効果です。